「…アクマ共は…『ノアの王子』が伯爵の下に戻った…その祝いにいまは見逃すそう言ったのだ」
 …しかし方舟から戻ってきたラビは…『アレン・ウォーカー』が『過去』を思い出し…そして伯爵の元に戻るにあたって…そういった類の『約束』がなされたのだと語った…
 …これは一体どういうことか…?…
 …『ノアの王子』と『アレン・ウォーカー』…
 …偶々『ノアの王子』を伯爵が見付けた時期と『アレン・ウォーカー』の『記憶封印』が解けた時期が同じだと言うことか…?…
 ……それとも………
 戻ってきたラビの話を聞いてから…ずっと疑問に思っていたこと…
 …そしてここにきて…あのクロス・マリアンが現れ…そしてアレン・ウォーカーに関する大変な事が解ったという…
 …それは一体なんなのか…?…
 とにかく先程急いでいたが為に、伝え損ねた『ノアの王子』のことをラビに伝えようと思い…私は伝えた…
   

 
―『ハート』の『鍵』―
              ―6―
 

 「!『ノアの王子』だって!」
 ジジイの言葉に…オレは事態の深刻さを知り大声を上げる…
 ―ギリッ…
 …拙いっ…
 そう思い歯を噛み締める…
 「そうだあの『ノアの王子』だ」
 そんなオレにジジイが重々しく頷く…
 …だが…ジジイは…知らない…『あの事』を… 
 「…まずいさ…」
 あまりの事に…喉に乾きを覚える…
 …アレンは…いま…どうしてる…?…
 クロス元帥は…アレンが一人でいることを差ほど気にしている風じゃなかった…
 それは…元帥が…それなりにアレンを信用していると言うことなんだろう…そんなに簡単には伯爵に掴まったりしないと…
 …けど…元帥は知らない…アレンの過去の記憶が戻っていることを…
 そして…『ノアの王子』のことも…
 …存在自体は…もしかしたら知ってるかも知れねェけど…
 「当然であろう『ノアの王子』は…」
 「そうじゃないさっ!ジジイ!アレンさっ!アレンが狙われた理由さっ!」
 オレの「拙い」という言葉にジジイが険しい顔で言い募ろうとするのを、オレはそう言って遮る…
 …途中で遮るなんて…ジジイに説教を喰らいそうなことだが…いまは『あの事』を伝える方が先だっ…
 そう思って言うと…
 「…まさか何か関係があるのか」
 ジジイも『何か』を察したのか…微かに目を瞠りオレをジッと見る…
 そんなジジイにオレは重々しく頷いて口を開く…
 「…関係大ありさ…『ノアの王子』が見付かったって言っても…『ハート』がなけりゃあ破壊は出来ない」
 …そう…いくら『ノアの王子』が『ハート』を破壊する存在でも…その存在を伯爵が見付け出したと言っても…『ハート』が見付からなければ…奴らに奪われなければ…『破壊』はされない…
 「当然だな」
 オレの言葉にジジイが頷く。
 『ノアの王子』が現れた…それでもジジイがある程度落ち着いているのは…
 『ハート』がまだ見付かってはいないから…
 『奴ら』が『ハート』を探しているから…
 だからこそジジイは…奴らの狙いがアレンだったと聞いて…『ノアの王子』の話を後回しにし…オレをアレンの所に行かせたんだろう…
 アレンのイノセンスが…『ハート』である可能性だってあったのだから…

                                            ―続く―