「…それに…その方が面白そうだったからよ…王天ちゃんv」
妲己以外は誰もいない王妃の間…彼女は王天君の消えた虚空を見つめつつ誰にも聞こえない程小さな声で、心底楽しいのだと言わんばかりの笑顔を浮かべて言った…
…そんな妲己の様子を…その一部始終を見ていたモノ達が在た…
…誰にも…妲己自身にさえも気付かせず…
…中空に浮かぶ幾つものパネル…それに映し出される幾つもの映像を…
…常に見つめ続けているモノが在る…
…何処とも知れぬ異空の果てに…
斉の国と羌太公―幕間―
…そしてそのパネルの一つに…いまその存在は視線を移す…
…それには白い大きな犬を連れた、長い青い髪の美しい青年と白い大きな猫の様な、額に大きな黒点を持つ虎に跨った、道化の様に奇妙な格好をした人物の姿が映し出されていた…
―「さぁ?とにかくその羌太公と同じ名を名乗る少年が、いま朝歌で占い師として評判になっているという事だけは確かですね…それでは楊ゼン…私はもう行きますので…」―
申公豹はそう言って去って行った…楊ゼンは一人混乱の中立ち尽くしている…
「…申公豹の奴め…余計な真似をしおって…」
パネルに映るその様子に…苦々しげに一人が呟く…
「…どうする…やっぱあいつ邪魔なんじゃないか?」
「いやそれには及ばぬ…それよりそなたは女の方を頼むぞ」
「…あいつか…そういえば太公望の奴は気を付けた方が良いんじゃないか?妲己の奴、羌太公目当てで斉を滅ぼしたって言ってたぜ!」
「…だが…よもや妲己があの事に気付いておると言う事はあるまい…まあ…わしの方でも気を付ける様にしよう…」
「…太公望か…無事に朝歌に潜入を果たした様だが…肝心なのはこれからぞ」
「精々妲己に気を付けるんだな!」
「…うむ…伏兵もおる様だしのう…」
「…我らの事は気付かれてはならぬ…決して…まだ時は来ていないのだから…」
―中空にて明滅する幾つものパネル…それを見つつ黒衣を纏った彼等はそれぞれに、何かの作業に取りかかる…
―続く―
―あとがき―
…あう…皆様申し訳在りません…長らくお待たせ致しました…
ようやく『変革の風10』が書き上がりました!
…それにしてもようやく書き上がってみたら何だか思いっきり本編から外れてる様な気が…(…いえ…完全に外れてるとも云えないんですけど…)
…まあ…そう言うわけで…これは幕間と言う事にしました…(でもこれは9話の続きに入れます…今のところ幕間の段を作る予定は在りません…作ったら分けるかも知れませんが…)
…それにしても…今回…やっぱり謎の占い師は出せませんでした…
その代わりとばかりに出てきた方々…
会話ばかりで描写が録に無いこの方々…
気付いておられる方はとっくの昔にお気付きでしょうが当分この方々の名前は出ません…謎の人として扱い続けます…
―それでは次回!楊ゼン登場です!―RIN―