「申公豹は僕に言いました、封神計画反対派の首謀者は羌太公だと…封神計画は崑崙の最高機密の筈なのにです…そして原始天尊様、あなたはあの時確かに12仙が協力者だと仰いました…そしてそれには少し特殊な事情があると…あの時の原始天尊様のお言葉から僕はてっきり太公望師叔ご自身が何らかの意図があって反対派と行動を共にしているのかと思っていました…ですが太公望師叔らしき人物の行動…そして申公豹の言葉…僕は段々解らなくなってしまいました…原始天尊様一体どんな事情があるのですか?」
 「…楊ゼン…羌太公や反対派の事は現在は良い…それよりおぬしは太公望を早く見つけだし連れ戻すのだ!良いな!」
 跪き己が疑問を告げる楊ゼンに対し、教主はただそれだけを告げ、そしてそれ以上を許さなかった… 


 
斉の国と羌太公―4―

 
 ―現在・商王国の王都・朝歌では、ある一人の旅の占い師の少年の事が噂となっていた…
 
 ―約10日程前朝歌問前に自らを賈人兼旅の占い師と名乗った旅装束を纏った少年はいた…
 「…予定より遅れたけど…何とか朝歌に着けたな…それじゃあ早速久し振りに異人に会いに行こうか…」
 そう言って彼は市の方向を目指して歩き始めた…
そして市に着いた彼はその一角にある、とある屠肆へと入って行った…
 
 すたすたと店の中へと入ってくるその少年・呂望を最初に見つけたのは、その店で働く少年だった…
 「…あ…あなたは…いつ…何故…こちらに…」
 少年は驚いた…何故なら目の前にいたのは現在のこの朝歌に、この様なごく普通の旅装束では決して来る筈の無い人物だったからだった…
 「朝歌に着いたのはつい先程かのう…少々予定が狂ってしまってのう、どうやら決行を早める必要があるようなのだが…異人は来ておるかのう?」
 旅装束を纏った彼は真剣な面持ちで少年の外見には似合わない老人の様な言葉遣いでそう言った…
 「…それでは…ついに…尚甫様…嗚呼!!はい!宋異人様は奥に居られます!僕呼んできます!」
 「ああ、そのような事はせずとも良い、わしが行こう、おぬしはここで店の番を続けるが良い」
 呂望の言葉の意味するものに気付いた少年は感極まる少年を押し止め店の番を続けるように告げると呂望は更に奥へと向かった…

                        ―続く―
 ―用語解説―
  屠肆(とし)肉屋の事