第二章 出発(たびだち)
「御主人、原始天尊様のお話なんだったスッか」
太公望が玉虚宮から出てくるのを見て白い霊獣・四不象(スープーシャン)が問いかける。
「知ら〜ぬ」
「知ら……ま、また居眠りしたっスね、御主人……」
「ま、まあ、それはともかく、わしは出かけるが、今日はついてくるでないぞ……」
その言葉に慌てて引き留めようとする四不象の口めがけて何かが飛ぶ。
「ダメッスよ、御主人……ゴク……」
その何かを四不象は飲み込んでしまった……
ドテッ!そんな音を立てて四不象が倒れた。それを見て太公望が慌てて駆け寄る。
「ス、ス−プー、しっかりせい……」
太公望は四不象を揺さぶろうとして気がついた。
スースースー
四不象は熟睡していた……
その様子に太公望は溜息をして、背後の人物に声をかける。
「お主の仕業か普賢……」
太公望が振り向くと、そこには頭に光輪を持つ少年、崑崙十二仙の一人、普賢真人が立っていた。
「望ちゃん、街に行くのならその前に僕の洞府に来ない?そのままじゃ目立つよ……」
「普賢……」
「他のみんなはもうそれぞれの洞府に帰ったし、原始天尊様と白鶴は眠ってるから、ちょっと位なら大丈夫だよ」
「お主、何か勘違いしておらぬか、わしはちょっと私用で出かけるだけじゃ、大したことではないわ」
そう言って太公望は大笑する。
「それじゃあすぐに帰ってくるの?」
普賢はにこやかに問いかける。
太公望はたじろいぎ……
「お主にはお見通しか……」
溜息を吐く。
「それではお言葉に甘えようかのう……」
そして二人は普賢真人の洞府へと向かった。