第三章 占い師vs道化
草原を少年が一人、旅をしていた。
その少年の前に、いきなり道化のような姿の男が霊獣を伴って現れた。
「うあー、なっなんだお前は……」
少年は仰け反って言う。
「はじめまして、私は道士・申公豹、あなたが原始天尊の一番弟子・太公望ですね……」
「僕の名前は呂望、ただの旅の占い師だ……」
「人違いだと言いたいのですね…まあ、それでも別に構いませんが……」
申公豹が不思議な形の鞭を手に取る……
「納得したのなら、僕はもう行くから……」
そう言って少年・呂望は立ち去ろうとした。
「お待ちなさい、私はまだ納得してませんよ」
「雷公鞭!!!」
いきなり申公豹は少年に宝貝・雷公鞭で攻撃をしかけた。
呂望は逃げようとしたが、直ぐにそれができない事に気付く。
自分の後方には村があるのだ。
「クッ」
呂望が悔しげに呻く、一瞬だけ雰囲気が変わった、ごく普通の少年のそれから、掴み所のない何かに……
呂望は懐から鞭のような物を取り出し振るう……
その時、風が起こり……
雷公鞭の雷とその風により生じた衝撃により、呂望は何処かに吹き飛ばされ……
申公豹は……
「すばらしい…雷公鞭の威力は予想以上でした…今後は使わないようにしましょう…」
「まさか雷公鞭がこんなに強力だったなんてね……」
「さっきの風は凄かったですね…」
「うん、でも、いいの申公豹…見た所、普通の人間みたいだったよ、ホントに人違いだったんじゃ……」
霊獣・黒点虎の問いかけに申公豹が振り返る。
「ど、どうしたの、申公豹、血が出てるよ!!!」
慌てる黒点虎に申公豹は楽しそうに笑む……
「黒点虎、普通の人間が宝貝を使えると思いますか?」
「え、それじゃあ……」
「彼は嘘は言っていませんよ……ただ、普通の人間の振りをして、誤魔化そうとしていたようですが……」
混乱する黒点虎に「人違いでもないですよ」と追い打ちを駆けてから、それを無視して、問いかける……
「さて…黒点虎、彼がどうなったのか千里眼で見て下さい」
「どうやらかなりの傷を負って落ちたようだよ、雷の直撃は免れたようだけど、さっきの突風と雷の衝撃で飛ばされちゃったみたい、そのおかげで助かったみたいだけど……」
「生きているのですね!?」
申公豹が喜びの声を上げる。
「は?」
「私は生まれて五千年、初めて自分の血を見ました、彼をライバルに決定します」
「彼の後ろに羌族の小さな村があったのは知ってました、それを守りかつ私に一矢報いることもできた…骨のあるいい道士じゃありませんか、殺すには惜しい逸材です」
一方呂望は……
「だー、一体なんじゃったのだ、あやつは…いきなり攻撃してくるとは…わしの打神鞭で防げたから良かったが…」
呂望否太公望は宝貝・打神鞭を振り回しながら怒っていた……
―あとがき―
自称占い師の呂望君こと太公望と申公豹の対決、これはどうしても書きたかったんです。
今後もしばらくは太公望はじじい言葉をしゃべりません、たまに一話に一回あるかないかでしゃべるかも(あやしげ……)
次回予告、謎の占い師の少年(読者さまには正体バレバレ)と天才道士が…

