第四章 天才道士の疑問

 仙人界の者たちの間で天才道士との呼び声も高い楊ゼンは崑崙教主・原始天尊の召還を受け玉虚宮・謁見の間を訪れた。
 しかし其処には誰も居なかった……
 「おかしいなあ、確かにこの時間の筈だし、会議ももう終わっている筈だし……」
 (さっき玉虚宮の前で師匠に会ったから間違いない)
 「何かあったのかな……」
 楊ゼンがそう呟いた時だった……
 「おお、待たせたのう、楊ゼン……」
 「道士・楊ゼンまいりました!」
 原始天尊と白鶴童子がふらふらとした様子で奥の間から出てきた。
 「どうかなっさたのですか、原始天尊様……」
 その様子に楊ゼンは声をかける。
 「う、うむ……まあ、大したことではないのじゃが……」
 と原始天尊は言い淀む……
 「それよりもおぬしに用があって今日は来て貰ったのじゃが、実は別の問題が生じてしまってのう……おぬしにはそちらも頼みたいのじゃ……」
 「まずはその用の方をお窺い致しましょう」
 「わしの直弟子に太公望という道士がおる、そやつが行う予定の超重要計画の手助けをして欲しいのじゃが……」
 ここで原始天尊はまたも言い淀む……
 「―それは、封神計画ですか?」
 「そうじゃ……なんだ知っておったのか?」
 「…………」
 (封神計画、随分前から噂は聞いてたけど、ついに発動されるのか……)
 「原始天尊さま……お言葉ですが彼を太公望師叔の下につけるのは失礼にあたるのでは……?」
 白鶴童子のこの言葉に原始天尊は不思議そうな顔をする。
 「白鶴は太公望より楊ゼンの方が能力的に上だと見ておるのか?」
 「みんなそう思ってますよ!これじゃ楊ゼンが可哀相です!!」
 「よしなよ 白鶴、僕はこの命を受ける!!」
 (それにしても……問題っていうのは一体なんなんだ……)
 「ただし一つ条件があります」
 「太公望という道士がどれほどの器なのか僕は知りません、だから彼の器を試させて頂きたいのです、僕の上に立つ人物なのかどうかを……」
 「よかろう……だが……」
 原始天尊がまたしても言い淀み白鶴童子と顔を見合わせる。
 「……実は前に言うた問題とは、その…封神計画を阻止しようという動きがあるのじゃが…」
 「封神計画をですか?」
 「…うむ、それで太公望が…」
 「…太公望師叔がどうかしたのですか?」
 「行方不明なのじゃ…」
 原始天尊のその言葉に楊ゼンは眉を顰める。
 「しかし、原始天尊さまは千里眼が……」
 「うむ、じゃがどうも協力者がおるようでのう……」
 「協力者ですか、それで首謀者は誰なのですか……」
 (協力者……原始天尊さまは何かを隠している……)
 「わしと白鶴そして霊獣の四不象が何者かに薬を盛られてのう、四不象が直前まであやつと共におったのだが、その時あやつは一人で出かけると言っておったそうじゃ」
 「それで誰なんですか……」
 (……あやつ?それに出かけるって……)
 「うむ、協力者は十二仙じゃ、そしてあやつの目的は妲己ただ一人じゃ……」
 「まさか、それでは!!!」
 (十二仙が協力者……それに妲己が目的って事はまさか……)
 「うむ、だからおぬしには殷王国迄行って、あやつを連れ戻して欲しいのじゃ」
 「まさかそれじゃあ計画の反対派とは……」
 「まあ、少し訳ありでのう……くわしくは当人に聞くとよい……」
つづく
 ―あとがき―今回、太公望出てきませんでした、次回こそ……