「…いいえ…こんな所にいつまでも立ち止まっていた我輩も悪かったのです…気にしなくていいですよ…それより…顔色が悪いようですけど…大丈夫ですか?…もしかして気分でも悪いのでは…?…」
 ぶつかった僕にその紳士はそう言った。
 
 …ああ…優しい人なんだ…
 掛けられた優しい『言葉』に…心が温かくなって…苦しかった『感情』が落ち着いた…

 …けれど何故か…胸の奥が締め付けられるようで…

 ―ツゥ…
 「どうかしましたか?」
 その紳士の言葉に…僕は…
 「…あっ…なみ…だ…」
 自分が泣いている事に気付く…
 「…もしかして…何か悲しいことでもあったのですか…?…」
 気遣わしげな紳士の言葉に… 
 「…あっ…いえ…大丈夫です…」
 僕は慌てて涙を乱暴に拭って言った…


 
―羊が抱えるパラドックス―
              ―2―
  


 聞き覚えのある声に振り向くと其処には『アレン・ウォーカー』がいた…
 …其処にいたのは…確かに『アレン・ウォーカー』だった。

 ―けれど…

 …何故か涙を流し…不安げに揺れる瞳をした『アレン・ウォーカー』から…微かに…馴染み深い『気配』が漏れ出ていた。

 …これハ…v…
 その『気配』に気付き我輩は目を瞠る。
 …この…『気配』ハ…v…

 ―感じた『気配』…それは…

 …何故?…何故…『アレン・ウォーカー』から…この『気配』がする…?v…

 ―微かに…けれど確かに感じられている『ソレ』は…

 …『ノア』の…『気配』が…?v…

 ―『家族(ノア)』の『特有』の『気配(ソレ』…

 …その『事実』に…我輩は愕然とした。

                                       ―続く―