―『アレン・ウォーカー』から感じた微かな『気配』…
 …『それ』は確かに『ノア』の『気配』だった。

 …その『事実』に目を見開き…我輩は『何故?』と考える。

 ―ふと思い到ったのは…『14番目』との関係と…なにより『奏者ノ資格』…

 …『第2人類』は皆『ノアの血』をその身に引いている。
 …『それ』は『エクソシスト』であろうと例外ではない。
 そこまで考えて…

 …もしや…と思う。

 ―もしかしたら…『奏者ノ資格』が『その身』の内にあるが故に…『ノアの遺伝子』が影響され目覚めつつあるのではないかと…


 
―羊が抱えるパラドックス―
              ―3―
 


 「…あっ…いえ…大丈夫です…」 
 僕は乱暴に涙を拭って言うと…
 「…本当に…済みませんでした…」
 そう言って頭を深々と下げて…
 「それじゃあ…」
 そう言って踵を返し、その場を立ち去ろうとした…

 ―その時…
 「…ああ!待って下さい!」
 背後から追い縋るように聞こえたその声は紳士の声…
 …『その声』に…「どうしたんだろう?」と思い僕は振り返る。

 「…あの…?…なにか…?…」
 僕は不思議に思いつつ…振り返りながらそう問い掛ける。
 
 「……もし宜しければ…少しお茶でもどうですか…?…」
 問うた僕に…紳士はそう言って…すぐそこにあるカフェを指差した。

                                       ―続く―