「…キミは我輩の昔の知り合いに似ているのです…だから…少し話がしたくて…ご迷惑でしょうか…?…」
そう言って微笑った彼の表情(かお)は…とても切なげで…哀しげで…胸が締め付けられるようだった…
…だから僕は…とてもじゃないけれど断れなくて…気が付いたら彼の誘いに頷いていた…
―羊が抱えるパラドックス―
―5―
アレンと共にカフェへと入った。
「今日は良い陽気ですし…テラス席なんてどうでしょう?」
カフェに入ると我輩はアレンを振り返りそう問うた。
「…あっ…僕は…別に…」
我輩の問いにアレンは…何処か戸惑い気味な様子で曖昧に答える…
そのアレンの様子を見ていて、不意に我輩は『ある事実(こと)』に気付き、ハッと目を瞠る…
アレンの瞳の色彩(イロ)が僅かだが…本来の銀灰色から…微かにだけど黄色味を帯びていたから…
―そして…その色彩(イロ)を…揺れる瞳の感じを…以前(マエ)にも見たことがあったが故に…
…似てる…あの子に…初めて会った…『あの時』の『あの子』の『あの瞳』に…
その戸惑うアレンの瞳の色彩(イロ)に…我輩はフッとその事実(こと)に気付いて…
―『あの時』あの子は…その身に流れるノアの血が不完全ながらも覚醒しようとしていた…(…何故なのかは結局解らなかったのだが…)
…アレンの『気配』…それにこの様子に…なによりこの瞳の色彩(イロ)…ならばやはりアレンは…
そう思いながら店員に案内されたテラス席で、飲み物とケーキを口にするアレンの様子を眺める。
「…あ…美味しい…」
一口口にして目を見開き…
「…しんじ…られない…こんなに美味しいの…初めて…」
アレンは呆然とそう呟く…
『その呟き』に我輩は目を瞠り、アレンに気付かれぬよう、彼の様子を伺った。
―続く―