嬉しそうに美味しそうにアレンはケーキを夢中で食べる。
 そんなアレンの様子に我輩は昔を思い出す。

 …ああ…思えば『あの子』も……
 フッと思い出す。

 ―「…キミは我輩の昔の知り合いに似ているのです…だから…少し話がしたくて…ご迷惑でしょうか…?…」

 …ああ言ったのは、別に口実でもなんでもなく…事実だった…

 …ずっと前から気付いてたこと…

 …だからクロス・マリアン(あの男)も、アレンを弟子にしたのだと…そう思っていた。

 
 
―羊が抱えるパラドックス―
              ―7―
 


 「お代わり頼みましょうか?」
 ケーキを食べ終わったアレンが…少し物足りなさそうにお皿をチラチラと見つめているのに苦笑してそう告げた。

 …もう『アレン』はノアだと…確信していた。
 
 …そして『薬』を口にした以上、捕らえるのは容易いとも…

 …後は…『薬』が効くまで時間を稼げばそれで良い…

 「…キミは昔の知り合いに似てる…そう言いましたよね…」

 『時間稼ぎ』をと…そう考えて我輩は口を開き話し始める…

 「…『知り合い』と言うのは正確ではありません。…『あの子』は我輩の『家族』でした」
 そう告げて…そして手元の…花売りの少女から買った花を見つめ…嘆息を吐くと…
 「……もう…本当に昔なんですがね…」
 そう呟いた。
                                       ―続く―