「久し振りだってばよ!今日はじいちゃんからの注文品で『オレ』と関係ある物が一杯届いて大変だって『イノ』から聞いたけど、それってば『じいちゃんちの庭関係』の物だってば?」
 〈…それとも…他にも何かある?〉
 …取り敢えず『ドベ仕様』の口調の中に他人に聞かれても大丈夫な様に隠語を織り交ぜて問い掛ける…解る奴には解るが…誰も『ドベのナルト』が隠語なんか使うなんて思わないから、言葉通りの意味にしかとらないだろう…監視役のカカシにしたってそうだ…そしてあいつに見えない死角に入ってるのを承知で口唇の動きだけでそう伝える…これで『山中』のおっちゃんには監視が着いてきてる事が伝わるだろう…
 「ああ…悪いが今回はな特別なんだ、一寸いつもより多くて…誰かに手伝って貰うにしても、場所が火影様の庭だからな…運んで整理するにしても、庭師に預けるにしても詳しい奴がいた方がいいだろうと思ってな…」
 「それでオレってわけ?」
 「ああ…お得意様だから詳しいのは解ってるからな…それよりまだ全部揃ってないし、丁度昼だ、飯はどうせいつも通りだったんだろ?一緒にどうだ?」
 「エッ!ホントにオレってば一緒に食ってもいいの!?」
 「勿論そのつもりで昼に呼んだんだよ!」
 「…うー!なんなのよう!父さんもナルトも何時の間に仲良くなったの!?って言うかお得意さまって!ナルトうちの店のお得意様だったの!?私全然知らなかったわよ!…そりゃ…確かにたまに来てるのも見かけたけど…そんなに頻繁じゃなかったじゃない!って言うか!火影様の庭って何!?」
 俺とおっちゃんの会話内容にずっと疑問を募らせてたらしい『イノ』は遂に爆発!すごい勢いで聞いてくる…
 …俺とおっちゃんは顔を見合わせ…『オレ』が口を開いた…


 
いつもと違うこと ―第1章―
              ―第3話―
 


 「…うーん?何時からって言っても…オレ小さい頃火影のじいちゃんちと託児所往復する生活してたんだけど…その頃じいちゃんちにいる時には、暇だったから庭師のおっちゃん達の手伝いとかしてたんだってばよ!オレってば結構花とか好きだし!それでその関係で『山中』のおっちゃんとも知り合ったんだってばよ!」
 …これぐらいなら言っても問題は無い…『ドベのナルト』の経歴として一寸調べれば解る表向きの情報だ…
 …まあ感の良い奴ならただ『庭師』って聞いただけなら、その言葉にピンと来るかも知れないけど…まさか『オレ』が『そう』だなんて思わないだろうし…わざわざ普段から『花が好きだ』と言ってるし、まあ『オレ』を知ってる奴なら、火影の屋敷で育てて貰った何も知らない狐のガキが、恩を感じたのと花好きが高じて庭造りの手伝いをしてたんだろうって思うのが良いトコだろうな…そしてそれなら花屋の常連でもおかしくないとも思う筈だ…間違っても『ドベ』の『オレ』が『庭師』だなんて思う筈がない…
 …大体里の中で『庭師』なんてわざわざ隠語を使う必要あるわけない…だからここでは普通言葉通りの意味しか持たない…第一普通『庭師』の『庭』って言ったら大名の『庭』だし、其処に詰めてる『暗部』クラスの奴らの事だけ…まさか更に裏の意味があるなんて『あの部隊の存在』知ってる奴らぐらいだもんな…
 …あれ『イノ』が変な顔してる…どうしたんだ?
 「…そうだったんだ…ナルト…あんたって…バカで騒がしい奴だって思ってたけど…結構苦労してたのね…」
 …うーん?なんか『イノ』の奴急にしんみりとしてどうしたんだ?まさかこの程度の身の上話で『オレ』に同情?…まさかね…大体俺らの年代は孤児が特に多くて…まあそれでも一族丸ごとってのはそうそういなかったから、それぞれ引き取られるべき所に引き取られて、それでも引き取り手のない子供や、あの頃は里も人手不足で忙しくて、引き取っても忙しくて面倒が見られなくて孤児院兼託児所の『あそこ』に預けっぱなしどころか、『あそこ』も一杯で火影邸にアカデミーの空き教室まで使ってた位だからな…
 …それである程度でかくなるとみんなそれぞれ自分が出来る範囲で色々やってたし、特に『あの』孤児院に引き取られて『あそこ』の住人って事になってる奴は俺も含めてな…まあ『オレ』の表向きの記録上では『オレ』は『あそこ』で『生まれた』って事になってるしな…勿論両親は孤児院関係者…尤もこれは嘘ではないけど…
 …だから『イノ』に言った程度なら『オレ』にとっては当たり前…
 『イノ』にも言ってみる…「オレが生まれた孤児院ではみんなそんな感じだったんだってばよ!」
 すると途端に目を見開いて『オレ』を睨め付ける様に見る。
 「…ナルトあんた孤児院で生まれたって、何そんな事明るく言ってんのよ!」
 …そしていきなりそう怒鳴られた…
 …何で?正直素でそう思う…
 …するとそんな俺と、怒る『イノ』を見て『山中』のおっちゃんは嬉しそうにくつくつと笑ってる…
 …笑って俺の頭をくしゃりと触り…
 「さあ!それじゃあ飯にしよう」
 そう言って店の奥に向かって行った…
 …仕方がないので『オレ』も『イノ』と共に追い駆ける…
 …外で…監視役のカカシが何故だか知らないが殺気立ってるみたいだが…俺には関係ないみたいだし(『オレ』に向けられてる訳じゃないし)敵が近くにいるってわけでもないから放っておく…
 …あいつ(カカシ)は昔から変人だと有名だと、以前からじいちゃんやアスマ…他にもまあ色んな奴から聞いてるし…第一俺も、直接あいつを知ったのは下忍になってからだけど…それでも充分そうだと思うし…
 …だから気にしない…どうせ大した事じゃないんだろうから…
 …大した事(侵入者)とかなら、こんなに近くにいるんだから俺や『山中』のおっちゃんが気付かない筈ないからな…
 …兎に角あいつ(カカシ)は放っとこう…そう決めて俺は『山中』のおっちゃんと『イノ』の後について『山中』の家の方へと向かった…

                                  ―続く―