…カカシは…火影邸の離れの縁側に腰掛け、足をぶらぶらさせながら『やまなか花』から運んできたと思われる荷物を開けて、嬉しそうな様子で何かを探しているらしいナルトをジッと見つめていた…


 
いつもと違うこと ―第2章―
              ―第3話―



 「あっ!あったってばよ!オレが頼んだヤツだってばよ!」
 ナルトが…何個目かの箱を開け、暫く経った時嬉しそうな様子でそう言った…
 …正確には…かなり距離の離れた所にいるカカシにはその声は聞こえなかったが…
 …ナルトの唇がそう動いたのを、カカシははっきりと見た…
 飛び上がらんばかりの勢いで喜ぶナルトの様子に…カカシは微笑ましく思いながらも…その『ナルト注文の品』を請負・用立てた『やまなか花』の店主に対し、嫉妬の念を抱く…
 …普通に考えれば…『注文を受けた花屋の店主がただ仕事をしただけ』で嫉妬なんぞする謂われも、される謂われも、まるで無いのだが…
 …いかんせん嫉妬をしている『はたけカカシ』は、あらゆる意味で常人とは一線を画していた…
 …『ナルトの現在の歓喜も、この後の感謝の笑みも…そして何故か遡っては(…カカシにとっては少しも何故では無いのだが…)…自分の知らぬ内にナルトと接点を持っていた事…しかも自分より早くナルトと会って話をしていた(…親しいなどとはカカシは認めるつもりは無い…)事』等が(…カカシにしてみれば細かく言えばまだまだあるが…)どうにも許せぬのだ…
 …もしも…この時のカカシの考えを…嫉妬の念を向けられてる、当の山中家当主や三代目火影そしてその火影と親戚であり、カカシの同僚で割と古い付き合いのアスマ…
 …そして…ナルト本人が知ったならば…(…カカシには言わぬであろうが…)
 …皆口を揃えてある四字熟語を言うだろう…
 …そう『自業自得』と…
 …だが…もしこれを聞いたならカカシは…己の過去の所業等は棚に上げる所か、文字通り綺麗に忘れ去って…(…恐らくは…指摘されて始めて思い出すだろう…そんなこともあったっけと言う感じで…)
 …「何のこと?」或いは「どういう意味?」と言い、過去の所業を指摘されたなら「それがどうしたの?」位は言うだろう… 
 …そしてそれでも平然と『ナルトの周りの人間』に対し嫉妬の念を抱くだろう…
 …そういう男である…
 …が…それでもカカシは比較的現在は機嫌が良かった…
 …少なくとも先程迄よりは…
 …自分の知らないナルトを、山中家の者達は知っているという事に嫉妬し、殺気立っていた先程迄と異なり…
 …現在自分はナルトの笑顔を独り占め状態なのである…例えそれが自分に向けられた物では無いとはいえ…自分が知っている限りでは、その笑顔はアカデミーの中忍教師から一楽に誘われた時の、その瞬間に浮かべる笑顔と同様の嬉しそうな物であった…この笑顔はナルトの笑顔の中でも最高の物の内に入る物…つまりナルトがそれだけ喜んでいるという事になる…(…カカシはこの点がかなり気に入らないのだが…)
 …兎に角ナルトの最高クラスの笑顔をただ単にこの場に誰もいない為とはいえ、自分一人が見ていて、邪魔も入らずそれを満喫出来ると言うのが、カカシとしては最高に嬉しい事だったのだ…

                                   ―続く―