「…そろそろいい頃だろう…『教団』に行って『正式』に『エクソシスト』になってこい」 
 椅子に優雅に腰掛けワインを飲みながらそう言った己の師の言葉。

 「……いよいよなんですね…師匠…」
 その『言葉』を思い出しながらアレンはごくりと固唾を呑み…そして目の前に聳える断崖を見上げてそう呟いた。 


 
―『偽りだらけ』の『正式入団』―
                  ―1―
 


 目の前には…凄まじいまでの断崖絶壁…
 この上にエクソシスト総本部『黒の教団』がある…

 …懐かしいな…『本部』に『戻る』の…何年ぶりかな…

 そう思いながら僕は見上げ…

 …でも…と少しだけ憂鬱になる…

 …だって…
 …この断崖…上らないといけないんだもんなー…

 僕は思わず半眼になって…
 ―ハア…と嘆息を吐く…

 …おまけに…本気を出すワケにもいかないし…
 …『道化ノ帯(クラウン・ベルト)』を使えば…アッと言う間で上がれる…
 …でも…そう言うわけには行かない…
 …だって『僕』は『アレン・ウォーカー』として…『入団』しに来たんだ…
 …『6人目の元帥』として戻ってきたわけじゃない…
 …それに…第一それなら『水路』を使える…

 …でも…

 …どんなに面倒でも…
 
 …『僕』は…『アレン・ウォーカー』は…

 …常に『道化(クラウン)』の装束を纏い仮面で素顔を隠す…『大剣型』のイノセンスを扱う…『隻腕の元帥』…とは『別人』でないとならないから…

                                       ―続く―

 ―あとがき―
 漸くブログでエピソード抜粋形式でUPした部分の加筆修正版の『本館』入荷開始です。
 …と言ってもこの第1話はあんまり変更箇所は無いんですが…ハハ…
 
                                  ―それではまたの機会に―RIN―