「…僕のイノセンスのことで…大切な話があるんです…その…出来ればコムイさんだけに…人払いをお願い出来ないでしょうか」
 真剣な表情でアレンくんがそう言う。
 「…イノセンスのことで…かい?」
 その彼の『言葉』と、何故か緊張感さえ漂う彼のその真剣な表情に、ボクは彼・アレンくんの顔をジッと見てそう問う。
 そのボクの問い掛けに、アレンくんは『はい』と頷いて…
 「師匠から『話すのは限られた人間だけにしろ』と言われていますので…」
 そう言った…

 …その『言葉』に…ボクは暫し考える。

 …イノセンスのことで大切な話か……
 …しかもクロスがわざわざ『限られた人間にだけに』と言った…か…
 …これはかなり重要なことかも知れないな…

 ―伝言の主は『クロス・マリアン元帥』…
 その事実にボクはそう考えて、そしてアレンくんに視線を向ける。

 ―物珍しそうに…『科学班(ここ)』を見回していた姿を思い出して…

 …或いは…もしかしたら…アレンくんが思っている以上に…
 そう考えたボクは…アレンくんの申し出通りリナリーに手術室から出て貰った…


 
―『偽りだらけ』の『正式入団』―
                  ―16―
 


 「…それでアレンくん…キミのイノセンスがどうかしたのかい?」
 …クロスの弟子だってだけでも十分驚きなのに…この上一体何があるのか…
 …クロスが絡むことっていっつもとんでもないし…ちょっと予想がつかないなー…
 そう思いながら問い掛けると…

 「…その…その前に…そこの扉閉めてもいいですか…?」
 チラリとアレンくんが手術室の…開け放たれたその扉を見る…

 「…ん?別にイイけど?」
 そう答えると…
 「…じゃあ…お言葉に甘えて…」
 そう言ってアレンくんが扉を閉める…

 …う〜ん…クロスとは全然違うな〜…
 …どっちかというとクラウンくんに似てるかな…
 …やっぱり師匠のクロスがあんなだからなんだろうね…
 そんなことを考えていると…

 扉を閉めたアレンくんが戻ってきて…
 「…それじゃあ…コムイさん…まずは僕のイノセンスを発動しますね…」
 そう言ってアレンくんが発動させたイノセンスは…白銀に輝く巨大な『かぎ爪』…

 …それは間違いなく『寄生型』…
 …さっきの映像で見た時…まさかとは思ったけど…

 …驚いたな…クロスの周りには寄生型ばっかり集まるようになってるのかな…
 …う〜ん…だとしたら面白いな〜…一遍ちょっと調べてみたいかも…
 そんなことを考えながら…

 「…ふーん…君も寄生型なのかい?」
 ボクはその考えをおくびにも出さず…ただアレンくんにはそう言った…
 
                                       ―続く―