―『発動』されたアレンくんのイノセンスは白銀に輝く巨大な『かぎ爪』だった…

 …それは『映像』で見た時点で、ほぼ予測は付いていた。

 …でも…『左腕の寄生型』か…

 …一瞬「まさか」とは思ったけど…間違いない…『あの子(クラウンくん)』と『同じ』だ…
 そう思って…
 「…ふーん…君も寄生型なのかい?」
 ボクはアレンくんにそう言った。

 ―彼が元帥(クラウンくん)の事を知っているかはともかく…クロスの弟子として彼の傍にいたのなら『聖母ノ柩(マリア)』の『存在(こと)』は知ってるだろうと思って…
 

 
―『偽りだらけ』の『正式入団』―
                  ―18―
 


 「ああ、君もって言うのはね…クロスはやたら寄生型と縁があってね…」
 …でも一応…もしかしたら知らないかも知れない…そう思ってそう言い掛けると…
 「…いえ…あのコムイさん…そのことなんですが…」
 どこか慌てた様子でアレンくんはそう言った…
 「うん?なんだい?」
 その様子に僕は不思議に思い問い掛ける…

 「…えっと…その…なんて言ったら良いんでしょうか…たぶん…言葉で言っても信じられないかも知れないんですけど…」
 アレンくんはどう切り出すべきかと言った風に迷っている様子で口を開く…

 「…あの…実は…僕…コムイさんとは初対面じゃないんです…」
 「……へ?…」
 …初対面じゃ…ない…?…
 その言葉に…ボクはもう一度よくアレンくんを見直す…

 …白い髪に銀灰色の瞳…年齢11〜12才ほど…顔に傷跡…そして赤黒い左腕…
 …こんな目立つ容姿の人物に会っていて…この『自分(ボク)』が記憶していない筈がない…

 …だが…『彼』…アレンくんの容貌と一致する人物はボクの記憶には存在しない…

 …だとしたら…アレンくんの記憶違いか…あるいは…

 「…アレンくん…以前に会ったって言うのはいつどこでだい?その時クロスもいたのかい?」
 『何時会った』のかと思ってそう聞いてみる。
 …もしかしたら『イノセンス』に寄生される前かも知れない。寄生されて…その結果『容姿』が変わった…そんな可能性(こと)も、もしかしたらあるかも知れない。何しろ『イノセンス』は未だ未知の部分がある…だが…そんな可能性があったとして一体何処で会ったと言うのだろう?…
 …ここ数年ボクは殆ど、この『教団本部(ホーム)』から外に出ていないし、出ても『護衛』と一緒に馬車で移動していて、しかも泊まるのは『教団』と『関係』のある『施設』ばかり…
 …アレンくんと…一体『何処』で会ったと言うんだろう…?…
 そう疑問に思っていると…

 「…はい…師匠も一緒に…何度もこの教団本部で…」
 そう言ってアレンくんは頷き…
 ボクはその言葉に「えっ!?」と思う…
 「…コムイさんが『僕』を解らないのは当然なんです。…いまの僕は…たぶん…コムイさんの想像している『僕』の『姿』と全然違いますから…」
 …それは…どういう…
 …もしかして…やっぱりイノセンスの所為だろうか…?…
 そう疑問に思い問おうとした時だった…

 「…だから…言葉で説明するより…実際見て貰った方が早いと思うんです…」
 そう言ってアレンくんは…発動したイノセンスを掲げ…
 『オン!a(アバタ)u(ウラ)m(マサラカト)『導式・解印(オン・ガタル)』』
 そう唱える。

 ―アレンくんの口から出た『それ』は『呪文』の『詠唱』…

 …えっ!?…なんで…アレンくんが…
 『魔術』とは関わりのない『普通の少年』…そう思っていたから正直ギョッとした。

 ―そしてボクが驚いているその間も、アレンくんは『術』を続けている…

 「イノセンス段階制限発動を解除…初期形式『神ノ十字架(クラウン・クロス)』からコンバート…イノセンス『神ノ道化(クラウン・クラウン)』発動!!」

 …えっ…?…いま…アレンくんはなんて言った…?…
 …『神ノ道化(クラウン・クラウン)』だって!?…
 『アレンくん』の口から出たその『イノセンス』の『名前』にボクは瞠目する…

 そして『アレンくん』が唱えた途端に…『アレンくんの左腕のイノセンス』から皓い皓い白銀の輝きが放たれ、その白銀の輝きが治まった時…その場に現れたその『人物』を…自分(ボク)は確かに知っていた…

 ―左手に大きな黒いかぎ爪を持つ…白い道化(クラウン)…

 …髪の色が違うけれど…でも…間違いなく…

 …数ヶ月前に…もうすぐ『戻る』と電話で言っていた…『あの少年』…

 …『クラウン元帥』と呼ばれる…6人目の臨界者…

 …クロスの唯一の弟子である…『少年』だった…
 

                                       ―続く―