―…「初めてありがとうって言ってもらえた」…―
 …ミランダさんの…その言葉…
 …込められた意味…ミランダさんの哀しすぎる…苦悩…

 …その言葉に…僕はフッと昔を思い出す…

 …マナと出会った…あの日のことと…
 …そして…
 …マナが死んだ…あの日のことを…


 
―『孤独の恐怖』と『希望の光』―
                 ―2―
 


 ―…「…『僕』は…『僕』なんか…『誰』もいらないんだっ…みんなが言う通り…いらない子なんだっ…」…
 …泣きながら…『僕』は孤児院を飛び出した… 
 ―…「…だから…『お父さん』も『お母さん』も…迎えに来てくれないんだっ…」… 
 ―…「…院長先生のっ…嘘吐きっ…」…
 ―…ヒック…ウック…エッ…
 …切っ掛けがなんだったのか…それは忘れた…
 …でも…僕はあの日…それまでずっと世話になっていた孤児院を飛び出した…
 …飛び出して…滅茶苦茶に走って…そして…
 …マナに出会った…
 …あの時のことは…実はあんまりはっきりは憶えていない… 
 滅茶苦茶に走って僕は暗い路地裏で、背の高い男の人にぶつかった。
 ―…「…ア………」…
 彼は一瞬何か困ったような顔をして…
 そして屈んで…僕に目線をあわせてくれた…
 ―…「……ぼうや…こんな所で…どうしたんだい?」…
 不思議そうに彼はそう問うた…
 ―…「…こんな時間にこんなところで…危ないよ…」…
 諭すような優しい言葉…
 ―…「…お家に帰らないと…」…
 …でも…
 僕はふるふると頭を振り…
 ―…「…おうち…ない…」…
 …そう…ちいさな声で…言った…
 ―…「えっ」…
 彼の驚く声に構わず…僕は続ける…
 ―…「…ぼ…く…は…いらないこ…だから…だから…」…
 そこまで言って…僕は泣き出してしまった…
 …優しい彼はさぞ困っただろう…「いらない子」だと子供が突然泣き出して…
 ―…「…そうか…それじゃあ…キミも…ひとりぼっちなんだね…」…
 ―『ひとりぼっち』…
 …その言葉に僕は頷く…
 ―…「…私も…ひとりぼっちなんだ…ねぇ…私と…一緒に…いかないかい…?…」…
 ―『一緒に…』…
 …唐突な…その言葉は…僕には衝撃だった…
 ―…「…ひとりはもう…うっ…私の息子になってくれないかい…?…」…
 …それは…僕が『誰か』に初めて必要とされた瞬間だった…
 ―…「…いや…かい…?…」…
 …その言葉に…その表情に胸が締め付けられるくらい…苦しくなって…
 …僕は大急ぎで…首を左右に振り…
 ―…「…や…じゃ…な…い……いやじゃ…ない!」…
 …そう言った…
 ―…「…名前を…私はマナと言うんだ…キミは…キミの名前は……」…
 ―…「…アレン…ぼくは…アレン…」…
 ―…「アレン…おかえり…これからよろしく…」…
 …そう言って…マナは…僕の頭を撫でて…
 ―…「…今日から…私とアレンがいる場所が…私達の『家』だ…」…
 …そして優しく抱きしめてくれた… 

                                            ―続く―