…紅先生は…確かにあるって言ってたのに…

 「ヒナタ」

 …昨日の事を思い出しながら…立ち尽くすヒナタに…背後から不意に声が掛けられた…

 「…は…母上…」
 …ヒナタが振り向くと、其処には母がいた…
 「…これから出掛けると言うことは、父上から聞きましたね」
 …その言葉に…ヒナタはこくりとだけ頷く…
 …ヒナタには…自分の気の所為かもしれないが…母の…そして…思い返せば…先程の父も…心なしか…普段より雰囲気が重苦しい様に感じられたのだ…
 「…フウ…宜しい…では支度をしますよ」
 …母は微かに嘆息を吐き…そして、そう言って踵を返し歩き始めた…
 …そしてそれは、着いて来る様にという、ヒナタへの無言の指示でもあった…
 
 …ヒナタは困惑していたが…
 …暫しすると…
 …ハッとして…母の後を追った…
 

 
木ノ葉の名家―1―


 ―『イツキ』家は『一応』旧家と言う位置付けにある…
 …『一応』と言うのは…それが…真実では無いからだ…

 ―…『イツキ』家とは『斎樹』家…―

 …通常『木ノ葉の奥』と呼ばれる一族は、この一族だと言われている…

 …そして…其れは…事実でもあり…同時に…虚実でもある…

 
 ―…その『イツキ』家の…『分家』の前に…
 …両親に連れられて…
 …なにも知らないヒナタが来ていた…

 …『日向』本家に匹敵する程…もしかしたら…それ以上に…大きいかもしれない…
 …その邸の前に…

 …何故か…正装を着せられて…

                                  ―続く―