「…解らないから聞いているんだが?」
 質問に質問で返されて、ムッとしてヒアシを睨め付ける。
 「……そうか…」
 そうして嘆息を吐いてヒアシは俺の腕を放した…


 
木の葉の名家―8―


 「…ナルト君…君は…以前からつくづく思っていたが…本当に鈍いね…」
 「?はあ?なにを突然?」
 …嘆息混じりに…しみじみとした様子で言ったヒアシの言葉に、俺は呆気に取られる…
 …ヒアシが何を言いたいのか…まったく解らない…
 「ナルト君、君はヒナタが『誰』を好きだと言ったのか聞いていなかったのかい?」
 「…?『誰』って…ちゃんと聞いて…うずまきナルトだろ!でもそれとヒナタが倒れたのとなんの関係がっ……って……え?…あれ…」
 …ちょっと待った…
 …ヒナタは…『誰』を好きだと言ったって?
 「…ヒ…ヒアシ…俺の聞き違いだよな…ヒナタが…下忍のうずまきナルトをって…」
 …そうだ聞き違いだ…そんな馬鹿な…
 …第一だからと言ってなんでヒナタが倒れるんだ?この場に『うずまき』はいないぞ?
 …そうだ…やっぱり気のせい…
 「ナルト君、気のせいでも聞き違いでも無いよ」
 ヒアシが首を振る…左右に…
 「……えっと…あっ!じゃあ!同姓同名の誰かが…」
 「…火の国中捜してもいないと言うことは知ってるでしょう…『渦巻』家統主と同じ『名前』ですよ…」
 …そう…『渦巻鳴門』とは歴代『渦巻』統主に世襲されてきた『特別』な『名前』だ…そして『うずまき』姓を名乗るのは『一門』縁の者だけ…
 …『一門』縁の者が『統主』の為の『名前』を勝手に使うなど有り得ない…『ナリト』が偽名として『ナルト』という『名』を使っているのも、いずれ『鳴門』の『名』を『継承』する『総領』だからこそ…そして『木ノ葉』の大半の者が『渦巻家』が隠された『一門』であるが為に、その事を知らないからこそだった…
 …父が…死を覚悟していたからこそ…三代目が…父の想いを汲んだからこそ付けられた…『成人』という『名』…
 …『一族』にとっての『特別』な『名』である『ナルト』とも読める、その『名』が付けられた背景…
 …そういった事情の総てを…自分は勿論…このヒアシもまた知っている…
 …そして…だからこそ…『木ノ葉の下忍』に『うずまきナルト』は『一人』…つまり自分しかいないのだと…解る…知っている…
 …でも…
 …だからって…なんでヒナタは倒れたんだ?…

 …というか…『あのドベ』が『好き』!?…

 …いったい…なんで…?…

 …ヒナタが『誰』を『好き』なのか…それを『認識』して…俺は…茫然とした…

                                            ―続く―