―かって魔族の結界で閉ざされていた大陸の…
…その地に生くる…総ての在り続けようとする者達の巫女達へ…
…神託と云う形で伝言(メッセージ)を…
…あの方へ…
虚無の欠片 ―2―
夜の街道で少女が一人盗賊に襲われていた…
「火炎球!(ファイアー・ボール!)」
其処に…何処からともなく響く呪文と共に、盗賊達の目前に火球が現れふわふわと宙を漂っている…
その様子に盗賊達がキョトンとしていると、唐突に少女の腕が誰かに引かれ、少女を庇う様にその人物は前に出た。
あたしは『力ある言葉』を唱え、アレンジを加えたファイアー・ボールを盗賊達の目前に生みだし、浮遊させる。
唐突に目前に現れた火球に何が起こったのか理解できない様子の盗賊と少女には構わず、あたしは少女を背後に庇う。
「なんだ!おまえは!」
「これは何だ!?」
突然現れたあたしに口々に言ってくる盗賊達…
「おっ!なんだ!よく見りゃあ結構かわいいじゃねぇか」
一人がそう言う…
「ほんとか!こりゃあいい!獲物が増えたな!」
「おい!お嬢ちゃん!命がおしけりゃおとなしくしな!」
「おとなしく金目の物を出しやがれ!!」
突然現れたのが、可愛いくか弱い女の子(勿論あたしの事よ)だと知った途端に威勢が良くなる盗賊達、現金な物である…
…さてと、それじゃあそろそろ…
あたしは右手を前に出し…た、その時だった…
「そこまでよ!!悪人ども!!」
夜の闇に昔よく聞いたフレーズが響く…
「なっ!どこだ!!」
きょろきょろとして、慌てふためく盗賊達。
「悪あるところに正義あり!闇夜に紛れ旅の途中のか弱き乙女を大勢で襲う心悪しき者達よ!」
何処からともなく聞こえるその声は、昔は再々聞いていた正義フリークの声だった…
「まっまた何か出るのか!?」
なっ!またですって〜!たかが盗賊のくせにあたしをあの子と一緒にするなんて〜(ちょっとむか)
「いかなる理由があろうとも!私利私欲のために悪行の限りを尽くすあなた達のその所業!誰にも裁けぬと言うのなら!正義の下にわたしが裁きを下します!!」
あーアメリア…相変わらずね〜
「何処だ!」
「あそこ!あの木の上にいるぞ!!」
盗賊の一人が指さす。
そしてアメリア、見つけられるのを待っていたかの如く…
「とおう!」
かけ声と共に思い切りよく飛び降り…
ゴォキ!!
何とも言えないすごい音がする…
見ると頭から着地し首が曲がってるアメリアの姿…
「な…なんなんだ…あれは…」
誰に言うでもなく盗賊の一人がポツリと言う…
「相変わらずねアメリア」
呆然としている盗賊達には構わずあたしはアメリアに声を掛ける。
「リナッ!」
あたしを見てアメリアは、嬉しそうに声を上げて起きあがり、こっちに向かって駆けて来る。
「久しぶりね元気そうなのは良いけど、あんたこんな所で何やってんのよ」
「リナと一緒よ!」
「へっ?」
「正義を行使するため、盗賊退治に向かう途中に、誰かが悪人に襲われてるみたいだったから、悪を成敗すべく正義の怒りを爆発させたのよ!」
ガッツポーズを取りながら胸を張ってアメリアが言う…
確かに…まあやってる事は同じだけど…って…そうじゃない!
「だぁぁぁぁぁ!違う!誰もそんな分かりきった事聞いてない!あたしが聞いてんのはどうしてセイルーンにいる筈のあんたがここにいるのかって事よ!!」
アメリアは…こんなんでも一応セイルーンのお姫様である…本当ならそうそう旅になど出られる筈は…ないのだが…セイルーン王家は…あんまりそういう事は気にしないらしい…
しかし今はアメリアは結構忙しい立場の筈である…噂通りなら…
…暫く前のある事件が原因で起こったデーモン大量発生への対策として討伐隊の陣頭指揮をやってる筈(アメリアなら絶対やってる!)で…
とてもではないがこんな所にいる筈がないのだ…ここがセイルーン国内なら…まだ分かるのだが…(ちなみにここはカルマートとゼフィ−リアの国境近く…位置的にはベゼルドとマインを越えたあたり…次の村を過ぎれば…ゼフィーリアである…ウゥ…)
「それは…」
「おい!てめえら!下手に出てりゃあつけあがりやがって!!」
アメリアが言いかけたその時、それを遮る様に盗賊の一人が叫んだ、見てみると盗賊達は顔を真っ赤にして、息を切らせている…
…そう言えばなんかさっきから五月蠅いと思ってたのよね〜そうかあいつらだったのか!でもあんまり下手に出てるって様子じゃなかったと思ったんだけど?
そんな事を思っていると…
「別にあなた方は下手になんて出ていませんでしたよ」
盗賊達に襲われていたあの少女が幾分不機嫌な様子でそう言った。
―続く―
―あとがき―
お久しぶりです、RINです。
最近忙しくて中々続きが書けず遅くなりました、済みませんでしたm(_ _)m
今回はアメリアが登場しました。
さて次回はいよいよ神託が出てきます。
―それではまた―RIN―
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