―『14番目』とノアの姫― 
              ―プロローグ―
  


 「……本当にどこも悪くないんですかっ…!…」

 ―…ハッキリとしない意識…どこかから聞こえる…『誰か』の…焦ってような声…


 
―狂気―
     ―6―
  


 ボーっとした表情で…その目が薄く開かる…
 「ハイvオハヨウございまスv」
 目を覚ました『少年』に千年伯爵はにっこりと微笑い掛ける。
 「……ダ…レ…?……」
 ボーっとした顔とトロンとし半開きになった目を千年伯爵に向けて『少年』は辿々しい口調で問う。
 その『少年』の様子に千年伯爵は一瞬眉を顰め…しかしすぐににっこりと優しく穏やかな微笑を浮かべ…
 「我輩は『千年伯爵』v『あなた』の『兄弟』v『あなた』の『家族』デスv」
 安心させるように優しい声音でにこやかに微笑い掛け、芝居がかった大仰な態度で腕を広げる…
 「……キョウ…ダ…イ…?…カ…ゾ…ク…?…」
 「ハイvそうですヨv」
 辿々しく『少年』が伯爵の『言葉』を繰り返すと、伯爵はニコニコと嬉しそうに笑って頷き…
 「…我輩はずっと待っていましタv『キミ』が生まれてからずっと…この『今日』と言う『日』を…オハヨウございまスvさあ帰りましょウv『兄弟』v」
 そう言ってその手を差し出す。
 目の前に差し伸べられた手と温かくて優しい言葉と…何故か感じる懐かしさと安心感に…『少年』は戸惑うことなく…けれど何故か異様に重いその身体を動かし手を伸ばす…

 ―そして『その手』が『千年伯爵』の手の上へと乗せられようとしたその瞬間…

 「……どう…した…の…?…その…姿…?…」
 部屋の扉が開き入って来た『茶色の髪の少年』が『黒い髪の少年』の『姿』に目を見開いて愕然と呟いた…

                                       ―続く―