『私』の背へと回された『アルファ』の腕…流れ込んでくる『彼』の『想い』…
…幾百…幾千…幾万…幾億…の『夜』を超え…どれ程振りにか『再会』した…『半身』の温かな腕…その『感触』と…そして…『彼』のその身に起こった事を…それでも変わらぬ『彼』の『願い』を知り…『私』は気が付いたら…涙を流していた。
…嗚呼…嗚呼…『彼』を『独り』にすべきでは無かったのだ…『私達』は『何が』あっても離れてはならなかったのだ…
―思い知った…けれどもう遅い…
…『彼』は『独り』ででも『この世界』を守るため…『変わり果てた』…
…最早…『彼』は…かっての『アルファ・ノア』ではない…『始まり(アルファ)』と『現在(ノア)』を司る『アルファ・ノア』では……
すっかり変わり果てた『彼』…『彼』は選んだのだ。『私』が見捨てた『この世界』を『現在』を守る為…『私』が『放棄』した…『私』が捨てた『それ』をも含め…『この世界』を『現在』を支え守ることを…
…その結果…『彼』は『アルファ・ノア』とは言い難い『存在』へと『変化』した…
「…嗚呼…だから…」
…だから『あなた』は…『自分』の『名前』も解らなくなってしまったのですね…
―『ノア』の『望み』―
―24―
「…『私』にあって…『彼』は『私』を思い出しました…けれどそれも全てではありませんでした…」
「…『思いだした』ってどういうこと…?…」
―ポツポツと話した『彼』との再会…その話しの途中でそう問うたのはロードだった…
「…『私』が『彼』と『再会』した『時』…『彼』は殆ど『全て』を『忘れて』いました…」
…そうほぼ全て…
…『私』のことでさえ…『あの瞬間』まで忘れていた…
…『彼』に忘れられていた…それはとても辛いことだった…けれど…『彼』をそこまで追い詰めたのは紛れもなく『私』だった…
「…『彼』は『自分』が『何者』なのかも忘れていた。…けれど『彼』は…『人間』を守る。『世界』を守る。その『使命』だけは忘れなかった…」
…『私』は忘れられていたのに…
「…『私』がその時…『人間』に対してどんな『感情』を抱いたのか、皆さんは解りますか?」
『私』は口元に笑みを刻む…自嘲の笑みを…
「…千年公…」
ロードが潤む瞳で『私』を見る。
…嗚呼…この子には解るのだろう…『14番目』に…『MANA』の『名』を取られた『この子』には…
「…『この時』…『彼』は『限界』でした…『背負った現在』に潰され掛けて…傷だらけで…『闇』に押し潰されそうになっていました…」
『あの時』…『世界』は『闇』で満ちていた…『闇』自体は『悪』では無い。むしろ『世界』にとって『必要』な『モノ』…そしてそれは『光』も同じ…けれどこの二つの『均衡(バランス)』が崩れた時…『世界』は『調和』を失い『崩壊』する。
「…『私』が捨てた…『世界』の『光』と『闇』をたった『独り』で全部背負って…『彼』は壊れ掛けていました…」
…『自分』が背負うべきモノから逃げ出して…結果的に『彼』に押し付ける形になったしまった…
…その『罪』の『結果』…『彼』は『壊れてしまった』…
―続く―