「……ワタサナイ…ワタサナイ…ワタサナイ…『ワタシ』ノ『コドモ』…『ワタシ』ノ『ウツワ』…『ワタシ』ノ『シンゾウ』…『ワタシ』ノ『タマシイ』…ケッシテ…ワタサナイ…『偽神(ヤツ)』ニドクサレタ…『ニンゲンドモ』ト…ソシテナニヨリ『偽神(ヤツ)』ニハッ!!……ワタサナイ…ワタサナイ…ワタサナイ…」
 ブツブツと千年公は『何か』を呟く。
 その様子はどこか鬼気迫るようで…僕は…僕らは…誰もそんな彼を見たことがなかった。


 
―『ノア』の『望み』―
              ―28―
 


 「…せん…ねん…こう…?…」
 鬼気迫る…見たこともない千年公のその様子に、僕は躊躇いつつもそう彼を呼ぶ。
 「…………」
 しかし『千年公』は『アレン』を強く抱き締めたままでピクリともしない。

 …どうしたんだろう…千年公…これまでこんなこと…一度も…
 そこまで考えてロードは「もしかして」と思う。

 「…千年公…」
 そしてもう一度ロードは呼ぶ…けれどやはり応えは無く…それにロードは口中で「やっぱり」と小さく呟き…

 「……ゴクリッ…」
 固唾を呑み…
 「……『ノア』…なの…?…」
 ロードは緊張した面持ちをし…
 「…オーギュスト・ノア…なの…?…」
 そして固い声で『その名』を口にし…

 …そして次の瞬間…『彼』の…『千年公』の肩がピクリと動いた。

                                       ―続く―