「…行きたいところか…だとしたらあそこしかネェが…」
 …行きたいところ…
 …アレンくんの?…
 …あそこしか…ない…?…
 …クロス元帥は…確かに『そう』言った…
 …じゃあ…クロス元帥は…心当たりがあるの…?…
 …だとしたら…アレンくんは本当に『其処』にいる…?…
 …そうかもしれない…
 …いや…きっとそうだ…
 …だって…アレンくんは…一緒に帰るって言ったもの…

 …だから…

 …アレンくん…『其処』にいるよね…?…

 …嗚呼…クロス元帥に…早く聞かないと…
 …そう私は思った…


 
―ノアの王子―
       ―12―
 


 「クロス元帥!アレンくんの居場所に心当たりがあるんですか?」
 いまにも泣きそうな表情(かお)で…リナリーが言う…
 いや…実際少し前まで泣いていたのだろう…涙の跡が…その顔には残っている…
 …馬鹿弟子も…なかなかやる…
 そう思いながら…
 「…ああ…この国でアレンが行きそうな場所は『あそこ』しかない…」
 頷き…再び言う…
 …だが…
 「…だが…『あそこ』も確率的には低い…そもそもあいつは出来ることなら二度とこの国には足を踏み入れたくはなかっただろうからな…」
 …俺の脳裏に『あの日』の事が過ぎる…
 「…元帥…それは…どういうことですか…?…」
 そう問うたのはリナリー…
 「…まさか…アレンは…この国に…」
 目を見開いて…そう問うのはジュニア…
 「…そうだ…アレンは昔この国にいた」
 「…だって…元帥…この国は…伯爵の…本拠地だって…」
 …信じられないと言わんばかりに…リナリーが呟く…小刻みに震えながら…
 「…アレンの養父が大道芸人だった…と言うのは知っているか…?」
 …何故だか解らんが…随分とショックを受けているリナリーの為にも、きっちり説明してやるか…
 …男共だけだったらどうでもいいんだが…リナリーがいるからな…
 …まったくアレンのやつ…あいつ自分こそ女泣かせじゃないか…
 …こんな美人を泣かせるとは…
 …自覚が無い分あいつの方が質が悪いんじゃないか…?
 …そう思いながら俺は…頷くリナリーを確認してから話し始める…
 「…いまから四年ほど前だ…俺は一通の手紙を受け取った…差出人の名は『マナ・ウォーカー』…アレンの養父だ…」
 …四年前のあの日…俺が受け取った手紙のことを…  

                                            ―続く―