「…いまから四年ほど前だ…俺は一通の手紙を受け取った…差出人の名は『マナ・ウォーカー』…アレンの養父だ…」
 …手紙…?…
 …アレンの養父の…?…
 『マナ・ウォーカー』…ノアを裏切った男の…?…
 …そこに手掛かりがあるんだろうか…?…
 …方舟での…アレンの言動の…

 …いったい『それ』には…『なにが』書いてあったんだろうか…?…

 …その手紙には『なにが』書いてあったのか…オレは『それ』が無性に気になった…
 …しかし果たして『それ』が…ブックマンのジュニアとしてか…それとも『ラビ』としてなのか…

 …或いは『この時』…『それ』が解っていたら…『何か』が違っていたのだろうか…

 …『オレ』は後に『何度』も…それを問い返す…

 …『選択の時』まで…

 
 
―ノアの王子―
       ―13―
 


 「…手紙には…千年伯爵の使いと名乗る男が、ある日自分の前に現れて、自分の住んでいる国…つまり『日本』なんだが…に来て大道芸をして見せて欲しいと言っている…断ることは出来そうもないと書いてあった…」
 …そう…そしてそれ以上のことも…
 「…千年伯爵が…何故…」
 …そう疑問を口にしたのはアレイスターの孫…
 「…断ることが出来ないって…どういう…」
 …そう問うたのはリナリー…
 「…それにどうして元帥に手紙を…?…」
 …そしてジュニア…
 …三者三様のそれらの問いに…
 「…マナと俺は古くからの付き合いでな…あいつは俺の…まあサポーターのような存在だった…」
 …俺は全てを話すわけにはいかないと思いながらも話し始めた…
 「…サポーター…?」
 …ジュニアが何か物言いたげな様子で言う…
 「…では…何故伯爵の要求に応じたのであるか?」
 …そう問うのはアレイスターの孫…
 …まあ…尤もな疑問だな…
 「…それはあいつらの周りをその時点でアクマが固めていたからだ。何も知らないアレンの周りを興行の手助けをすると言う名目でアクマ共が固めていたんだ」
 …妙な動きをすれば…アクマ共はいくら相手がノアでも伯爵の命令を優先しただろう…
 …そう…大道芸がどうのと言うのは…アレンの記憶をいじったことに気が付いた伯爵の口実で…伯爵の本当の目的は裏切りに気付いていると意思表示し、そして『アレンを連れて戻れ』と言うマナ(あいつ)への最後通告…
 …いずれ伯爵に殺されるであろう事が解っていたマナにとっても…
 …たとえそれがどんなに危険な綱渡りであろうと…
 …それでもアレンを連れてマナ(あいつ)はこの国に帰ってきた…帰ってくる必要があったから…
 …この国に戻る前に…裏切りを確信されたら…この国に足を踏み入れる事無くあいつは殺されていただろう…
 …そうなったら…アレンを守るための『最後の賭け』を準備することが出来なかっただろうからな…

                                            ―続く―