「…クロス…あの子を頼むよ…」
 …手紙を受け取った直後…俺はあいつに会いに行った…『裏切り』がほぼバレているというのなら…アレン(ガキ)は『聖母の棺(マリア)』に任せて、アクマ共を俺が総て壊してやると思った…
 …だが…
 「…どうしても日本に戻るつもりか?」
 …あいつはどうしても帰ると言った…
 …決していまはまだアクマ共を壊してくれるなと…


 
―ノアの王子―
       ―14―
 


 「…じゃあ…アレンを人質に取られていたのであるか?」
 …俺の言葉に最初に口を開いたのはアレイスターの孫だった… 
 …リナリーとジュニアは…どこか複雑そうな表情(かお)をしている。
 …それぞれ…『何か』に逡巡しているような…そんな表情(かお)だ。
 「…でも…なんで伯爵はアレンの養父を江戸に呼んだのであるか?」
 …そう問うのはまたもアレイスターの孫だけ…何故だ?…
 リナリーとジュニアのその沈黙に疑問を感じつつも言う…
 「…伯爵が江戸に来させたかったのは正確にはマナじゃない…アレンの方だ…」
 ―!!?
 「………ア…レ…ン…くん…を…?…なぜ…?…」
 俺の言葉にリナリーが目を見開き…動揺も露わに問う。
 「…それはアレンのイノセンスが『特別』なものだったからだ」
 …そう…マナが伯爵から聞いていた話が本当であるならば…
 「…とく…べつ…アレンのイノセンスが…『特別』って…」
 今度はジュニアか…
 …まあ…当然と言えば当然だが…むしろこれまでが静かすぎたくらいだからな…
 「…それって…もしかして…アレンくんのイノセンスが…」
 「…ハートなのであるか?」
 …次にリナリーとアレイスターの孫がそれぞれに口にする…
 「…いいや…違う…」
 …そんな3人に…俺は首を左右に振り…
 「…アレン(あいつ)のイノセンスは…『ハート』を見付けだし、覚醒させる『鍵』だ」
 …低い声で告げた…
 
                                            ―続く―