―「『イノセンスであってイノセンスでない』アレン・ウォーカーはそう言ったのであろう!ならば臨界点突破は安心材料にはならぬし、第一アレン・ウォーカーが伯爵の元に行こうとした理由が、仲間を見逃すことならば、裏を返せば、アレン・ウォーカーが伯爵の下に行かねば仲間を皆殺しにすると言うことだ、そしてもしそうであるならば、アレン・ウォーカーの性格から言って、エクソシストだノアだと言ったことは関係なく、恐らく伯爵の下へと向かうだろう」―
…聞こえたブックマンの言葉…
…帰ってきてからずっと…ウォーカーから離れることを恐れているような様子だったリー…
…ウォーカーが臨界点を突破したと知って…微かに変わったその様子…
…やはり…『方舟』でまだ『何か』があったのだ…
…それもウォーカー絡みで…
…そしてブックマンはラビから、その詳細を聞いたのだろう…
…ブックマンに言われてラビが駆け出す…
…その背を見送って…私はブックマンと話をすべく…静かに足を踏み出した。
―ノアの王子―
―8―
「ブックマン」
慌てて戻るラビの背を見送るブックマンに不意に掛けられるその声…
…その声に…ブックマンは僅かに目を見開き…
「ティエドール元帥」
…ゆっくりと声のした方へと向き直り…
「…聞いておられたのですかな…」
…嘆息を吐いてそう言った…
…ブックマンの…問いとも確認とも取ることも出来るその言葉に…
「…すべて…と言うわけでもありませんがね…」
…フロワは頷き…
「…少なくとも…ウォーカーが伯爵やノアと関わりがあるらしいとは解りました」
…漏れ聞こえた内容からの推測も交えて…そう言う…
「…ブックマン…方舟で『何が』あったのか。あなたはラビから聞いたのでしょう?先程の話の続きのこともあります。詳しく話しては頂けませんか?」
「…元帥…」
「…先程の話ではまるで…『ウォーカーが伯爵の元へ行く代わりに『奴ら』が『我々』を見逃した』…つまり先刻のアクマの撤退の理由が『そこ』にあるように聞こえました。…ですが…『あの時』アクマは…」
…迷うような様子を見せるブックマンを促すべく…先程の話が聞こえてから…ずっと気になっているその『矛盾』をフロワは指摘した。
―続く―