…ブックマンとラビの会話を漏れ聞いた時から気になっていたこと…

 …それは…

 『ウォーカーが伯爵の元へ行く代わりに『奴ら』が『我々』を見逃した』
 …つまり先刻のアクマの撤退の理由が『そこ』にあるように聞こえた…
 …しかし『あの時』アクマが残した伯爵の伝言(メッセージ)…
 …その内容…

 …方舟で一体何があった?『ノアの王子』とは一体?…

 …フロワ・ティエドールは…その疑問の答えを求めブックマンに問い掛けた…


 
―ノアの王子―
        ―9―
 


 「…『ノアの王子』のことですな…」
 …フロワ・ティエドールの指摘にブックマンは頷く…
 …その疑問はブックマン自身も同様であったから…
 …そう…
 …確かに『あの時』アクマは…伯爵は『ノアの王子』と言った…
 …『ノアの王子』が『戻った』から『見逃す』と…
 …だが…ラビの話が正しければ…
 『アレン・ウォーカー』が伯爵の元に『戻る』代わりに『見逃す』と…
 …ラビがアレン・ウォーカーから聞いたと言う話…
 『イノセンスでないイノセンス』
 アレン・ウォーカーがノアだという話…
 …まさか…否…そんな馬鹿なことがあるわけが無い…
 …そう…あるわけがない…
 …何故なら…
 「…『ノアの王子』は…『彼等』の『神』と密接な関わりを持ち…そしてイノセンスのハートを無に帰す存在…そう言われておる存在だそうな…」
 …『アレン・ウォーカー』が『ノアの王子』であるのならば…先の話の『矛盾』は消える…
 …だが…新たに大きな『矛盾』が生まれる…
 …それは『アレン・ウォーカー』が紛れもなくエクソシストであるという『事実』…
 …ただ…唯一引っ掛かるのは…
 『イノセンスでないイノセンス』
 …その言葉の示す意味…

                                            ―続く―