―「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…」―
 頭を押さえ叫ぶ『彼』の『顔』は僕達のいる場所からはあまりよく見えなかった…

 …けれど…

 『彼』のその叫び声が止み…そして暫く経った時…

 …先程までの苦しみようが嘘のように『彼』は静かになり…

 …そして…仰け反っていた為見えなかった『その顔』がその時見えた… 
 

 
―もしもあの時…(ケース1)
    『千年伯爵とロードがいたら?』
                 ―3―
 


 「…見間違いかな…『彼』に…ペンタクルがあったの…」
 …フワリと波打つその髪の下に…見えたような気がした…

 「…それは本当ですか?ロード」
 千年公のその言葉に頷き…
 「…遠目だからよく解らないけど…けど…」
 僕だって…まさかと思った…けれど…
 「…けど…千年公…よく見て…『彼』の髪…ここからじゃ遠いしアクマが邪魔でよく見えないけれど…真っ白だよ…」
 …『彼』の髪は白い…

 …最初は老人なのかと思った…
 …けれど…『あの』アレンが…一般人まして年寄りを戦闘に巻き込むとは思えない…
 …なら…

 …ああアクマが邪魔だ…
 …あいつがあの位置にいなければもっとハッキリ見えるのに…

 そう思っていると…不意に聴こえた『声』…

 ―《オ》《ハ》《ヨウ》―

 「…千年公…これ…」
 聴こえた『声』に目を瞠り僕は千年公を振り仰ぐ。
 「…ええ…v…覚醒したようですね…」
 僕の言葉にそう言って千年公が頷き…
 「…ネェ!千年公ぉ!あそこにいるのが『誰』かはともかく…もう間違いないよ…『彼』はノアだ!僕らの『家族』だ!」
 …そうたとえ『あそこ』にいるのが『アレン』であっても…
 「早く迎えに行こう!」
 そう言って僕は『彼』の所に駆け出そうとして…
 「ロード…ちょっと待って下さい…」
 そう千年公に止められた。

                                  ―続く―