「…もしかして…あんたが『オレ』をあんな目で見たのは…」
 そう言って…そして僕はポツリと呟く…
 「…あんたは気付いていたんじゃないのか…?…」
 
 そしてまた目を閉じて思い出す…

 ―『あの文字』を造った…『あの日』の事を… 


 
―…『オモイ』の『源(もと)』になった『モノ』…―
                          ―第1章―
                              ―3―
  


 「アレン…秘密の文字を造らないかい?」

 ―ある日マナがそう言った。

 「…秘密の…文字…?…」
 
 ―唐突な言葉によく意味が解らなくて…

 「なにそれ?」
 パチクリと瞬きし…
 
 ―そう問い返したのを憶えている…

 「そう秘密の文字。僕とアレンだけの二人しか知らない『暗号』だよ」
 問い返した僕に…マナはそう頷いて言い…

 「…秘密…?…二人だけの…?…」
 「そう二人だけの『特別な文字』。なにか他人に知られたくない大切な事をメモしたり、手紙に書いたりする時は、この『文字』を使うんだ」
 鸚鵡返しに問う僕に…マナはにっこり笑って頷き僕の頭を優しく撫でた。

 ―『秘密』とか『二人だけ』とか…まして『特別』なんて…そんなこと言われたのは初めてで…だから嬉しくて…あの時僕は頷いた…

 …でも…

 「…二人だけ…その筈の『暗号』がこの『楽譜』にある…」
 ティムが宙に映し出す『楽譜』を見遣り僕は呟く…
 呟いて…また呟く…
 「…そして…」と…
 
 …『僕』の…『記憶』にも…

 日に日にはっきりしたモノに変わっていく…『14番目』の『記憶』にも…

 僕の記憶とはまったく別の…『暗号』の『記憶』が…確かに存在していた…
 
                                       ―終わり―

 ―あとがき―
 久方ぶりの『オモイ』シリーズであり、そして第1章は今回で終わりです。
 次回からはいよいよ『14番目』過去編・覚醒前の『14番目』を書こうと思います。 若かりし日の…と言うか…幼い頃のマナやクロスやマリアも出てくる予定です。(一応ですが…)
 
                                  ―それではまたの機会に―RIN―