―森の中…蹲り泣き伏す楊ゼンの様子を…その場所から…少し離れた森の中心部にある小さな洞府の前で『彼』は見つめていた…
…結界の最も強固なその場所で…細く短い棒状の物を左手に持って…
…『彼』は…足下の小さな生き物に話し掛けた…
「幼き天狗よ…そなたあの幼子のもとに行き側におるがよい…」
…その『彼』の言葉に…その生き物は凄まじい速さで駆けだした…
…そしてそれを見送った後『彼』は瞳を閉じ、左手の棒状の物を天に掲げて、右手で印を結び、小さく呪文を唱える…
「疾!」
『彼』が口訣を口にすると、微かに風が巻き起こり、上空へと吹き過ぎていった…
幼き迷い子 ―10―
…玉鼎は黄巾力士に乗って楊ゼンが落ちていったであろう空域を探索していた…
…如何に自制しようとも…表情(かお)には焦りの色が見え始めていた…
…頭に過ぎる不吉な予感を頭を振って打ち消しても…
…こんな時こそ冷静にならねば…そう思っても…
…それでも…不安を…焦りを…消しきれず…
…絶望しそうになったその時だった…
…不思議な風が…玉鼎を取り巻き包む様に吹いた…
―続く―
―あとがき―
こんにちは、道行マリル様、RINですm(_ _)m
…相変わらず短いですが『幼き迷い子』第十話が書き上がりましたのでお送りいたします。
…えーと…天狗については…用語解説は後日に…ネタバレになりますので…
―それではまた次回―RIN―