黄巾力士に乗り、楊ゼンが落ちていったであろうと思われる空域を、玉鼎は焦る心を制し、慎重に気配を探る…
 …その直ぐ近くに強力な結界で護られた宙域があるのも知らず…
 …まして楊ゼンの気配が消えたのが、その結界内に紛れ込んだが為等とは夢にも思わず…
 …玉鼎はその空域を…幼き弟子の姿を求め彷徨い続ける…
 

 
幼き迷い子 ―9― 


 …えーん…えーん…
 どこだかわからない森の中で楊ゼンは泣いていた…
 
 「…ししょう…どこですか…」
 …恐々と師を呼ぶその声は随分と小さなものだった…

 …ウゥ…ヒック…
 …しかし幾度師を呼ぼうとも…返ってくるのは…森のこだまと静けさのみで…
 …楊ゼンに出来る事は蹲って師を呼びながら泣く事だけだった…

 ―楊ゼンは知らなかった…自分が遙か上空に在る浮島から落ちたのだという事を…
 …自分がいる所が…普通は決して立ち入る事など、否その存在すら感知できぬ程強力な結界に護られた領域であるなどと…

 …師が必死で上空…結界の外を捜しているということも…
 
 ―そして…何処とも知れぬ処より…事の一部始終を観ている存在が在るという事も…

                             ―続く―

 ―あとがき―
 こんばんは道行マリル様、RINです。
 久方ぶりに予定より早めにUPすることが出来ました…もっとも…相変わらず短いですけど…(苦笑)
 ともあれ…『幼き迷い子』第9話書き上がりましたのでお送り致したく思います。

 ―次回のUP予定は5月上旬頃になると思います…(…取り敢えずですが…)

 ―それではまた次回―RIN―