―師に遊んでいる様にと言われた楊ゼンは、崑崙に来て初めて草原を駆けた…

 …楊ゼンはしっかりした子供ではあったが、しかしそれでもこの時子供である事に違いは無かった…
 楊ゼンは初めて外で思い切り遊べるとあって、昂揚した思いと遊ぶ事に夢中になるあまり注意力が散漫になっていた…

 ―そうして…それは起こった…


 
幼き迷い子 ―5―


 楊ゼンは夜とはいえ…初めての外に夢中になっていた…
 見る物・触れる物全て珍しく、興味を惹かれた…
 最初は…夜行性の珍しい生き物を見つけて観察していた…
 だがそんな時不意に楊ゼンの頭上が一瞬陰り気配と何かの音に気付き、楊ゼンは何だろうと顔を上げ、気配と音のした方向を見上げた。
 すると遠目ながらにも、楊ゼンが見た事も無い大きな鳥が空を飛んでいた。
 楊ゼンはその不思議な鳥を追いかけた…
 楊ゼンはそれまでずっと鳥は夜は空を飛べないと思っていた…
 だから…尚更に興味を惹かれ、楊ゼンは気が付いたらその鳥を追いかけていた…追わずにはいられなかった…
 懸命に追いかけた、見失わない様に…
 必死で追いかけた、それこそ夢中で…
 …それは楊ゼンの旺盛な好奇心の現れでもあった…
 だが…それが仇となった…
 夢中になるあまりこの時楊ゼンは忘れてしまっていたのだ…
 自分が現在いる場所が何処なのかを…

 …そうその草原は玉泉山の外れ…
 仙人界・崑崙山脈の一部であり…其処は天空に浮いているのだという事実(こと)を…
 その草原には果てがあるのだという事を…

 楊ゼンは夢中で追いかけるあまり、足下の小さな窪みに気付かず、足をとられる…
 そしてバランスを崩し、転んで手をつこうとしたその方向には大地は無く、その時になって楊ゼンは初めて悟る…自分は草原の端まで来てしまっていたのだという事実を…

 ―そうして楊ゼンは其処から墜ち、何もない空中へと投げ出された…

                             ―続く―
 ―あとがき―
 お久し振りです、道行マリル様、遅くなって申し訳ありませんRINです。
 なんとか年内に間に合わせる事が出来ました。
 年末年始のお忙しい時期になってしまい済みません<(_ _)>
 『幼き迷い子』第五話をお送りしたく思います。

 えーと…ようやく楊ゼンに何が起こったのか!その発端が明らかにされました!
 …でもまだまだ楊ゼンの受難は続きます… 

 …先はまだ長そうです…予定より長くなってしまいました…申し訳ありませんが、気長にお持ち下さい<(_ _)>

 次回は少し長くお持ち頂く事になるかもしれません…
 ―それではまたの機会に―RIN―