ペルソナ―U―
―封神計画=人間の自立(道標を外れる事)―
王奕の魂魄に導かれて地上に下りた原始天尊が見つけたものは、頭部から血を流し、既に事切れていた赤子の死体だった。
「王奕よ…この赤子じゃな…」
原始天尊のその言葉に応えるように、その手の中の魂魄は微かに動いた。
―望!!生きていたのか!!!―
そう言って我を抱きしめた、その人の温もりに包まれ、我は新たな仮面(ペルソナ)を構成し、仮初めの眠りに就いた…
その日、呂の邑には各邑の代表者達が集まって円陣を組み、話し合っていた。
「頭領、子牙様はどうなされましたか?」
初老の男がまだ若い頭領に問う。
「朝歌に向かった…」
嘆息と共に吐かれたその言葉に皆が色めき立つ。
「なっ、頭領、幾ら賢いと申しましても呂望様はまだ十歳です、それを何故…」
「呂望様は次代であると同時に、羌族の希望でもあるのですよ!もし殷の軍の者に姜子牙であると知られたら」
長老たちの心配は当然の事だった、朝歌では羌族であるというだけで危険なのに頭領家の者でしかも呂望は初陣以後すでにもう何度も見事な策で敵を追い払う等して、手痛い目にあわせており、牙城(大将)という意味を持つ一種の尊称でもあるその字が殷に知られていない筈も無かった。
呂望は何時の頃からか羌族の希望と呼ばれる様になっていた、呂望が幼い頃から賢く、長老達は神童だといいまた岳の加護を得ているとも言われたが為だったが、それは、呂望に不思議と人を引きつける、ある種のカリスマがあり、その為遊牧民族であるが故に、決して纏まることのない羌族を纏める頭領となるだろうと言われ始めた頃からだった…
―呂望様はこの中の誰よりも長く生きるでしょう、岳の加護が見えます―
巫女のこの言葉が決定打だった。
長老達の非難を受けても頭領は堂々としていた。
「呂望は自ら使者として赴くと言いました、呂望が大丈夫だと言ったから行かせたのです」
頭領のキッパリとした言葉に長老達は沈黙し、その様子に続ける。
「では、会議を始めましょう」と
翌日の昼前、子馬の嘶きと共に我が子の無事の帰還を頭領は知った。
あとがき:十歳で初陣って適当です、中国人の当時の成人が何歳かも知りませんが(なんかで読んだけど忘れた…)でも人物紹介の所に姜子牙の名があることから、この話を書きました、字の由来から既に戦争経験ありという事になってます(私の中では…)字の由来に関してはPHP文庫の封神演技を参考にしました。

