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ペルソナ―Ⅵ―
耳を劈く轟音に白い軍旗をを見つけ、それが何であるか認めた時には、既に辺りは煙で包まれていた。
『殷の人狩りだー!!!』
突然の事にまったく不備の状態で人々は半ば恐慌状態で逃げ惑った。
それでも男達は勇敢な頭領の下、戦える限り戦い、女達が年寄りと子供を逃がす時間を稼ごうとしていた……
「父上、やはり望の姿は何処にもありません……」
「ならば、まだ羊の世話をしているのだろう―」
この状況下で姿の見えない弟を、村中を捜して見つけられず、不安そうに報告する長男に安心させる様に言うと、頭領は羊を放し民に指示をし馬を駆って先陣を切った。
今日はどこか羊たちの様子がおかしい、そう思いながら羊の世話をしていた呂望はいつの間にか村から随分と離れていたことに気付き苦笑した。
「何か…今日は変だな…」
羊たちをまとめながら呟いた時だった―
よく知る小母さんと会って、たわいない話をしていた時、遠くに殷の軍隊を見つけ、まさかと思い村の方を見た時、村は炎に包まれていた。
小母さんが悲鳴を上げて村へと走る。声を掛けたが無駄だった。
無駄だというのが解っていた。だから僕はそこに残ったんだろう―そう思った。
その後は呆然としていた為だろう、気が付いた時には僕は村の近くまで戻っていた…
何れ原始がスカウトに来るだろう、それまでに地上での為すべき事を終えてしまわねばな…
声には出さずに呂望の呆然とした表情のままで、己が為すべき事柄について暫し思考を巡らせた後に再び呂望という仮初めの人格の仮面を着け…
背後からの力弱い言葉に、強い怒りと憎しみを浮かべ振り向いた時…
そこに居た老人はもうすっかり弱っていた。
その老人の最期の言葉に呂望は決意を新たにし、村を去った。