ペルソナ(崑崙編)―1


 ―呂望様には岳の加護があります―
 …それが…呂望が三つの時…初めて太岳の巫女に会った時の言葉だった…

 ―仙人界に行くと決めた時…覚悟した事があった…
 …それは仙人界が天・人間界が地であるという事…
 人間界を離れ仙人界に行き仙道を目指すという事は地を離れ、岳の加護を自ら捨てるという事だった…
 ―羌の頭領―『姜子牙』たる己が…だがもはやその名を名乗る資格は無いだろう…
 いつの日か…地に戻っても…岳は二度と己を認めまい…
 …姜子牙はもういない…何処にも…
 …そう…覚悟した―

 崑崙に来たその日…師である原始天尊様より『太公望』という名を貰った。
 いまや名乗るべき名を持たぬ僕にはそれは丁度良い事だったが…一つだけ気になる事があった…それは…その名の由来だった…
 「…一体何故…どんな意味があるんだろう…」
 麒麟崖を行ったり来たりしながらそう呟いた時…
 「随分深刻そうだね…どうしたの太公望君…」
 不意に現れたその少年は…確か先刻…原始天尊様に同期だと紹介されたばかりの道士…
 「普賢殿…」
 「殿って…敬称なんか付けないでよ…僕ら同期だよ」
 「でも…普賢殿は兄弟子ですし…」
 原始天尊様は、お主らは一応同格じゃって言ってたし…
 「同期だって…原始天尊様は言ったよ…それに一応同格だって言ったのは君の方が格下だって意味じゃないよ、君の方が上なんだ!」
 「え……」
 格上?僕が普賢殿より?
 「そうだよ、でも原始天尊様は僕らには崑崙の上下関係なんか関係のない友達になりなさいって言ったんだよ、同格ってそういう意味だったんだよ」
 「どういう…事ですか?」
 「…分からないけど…原始天尊様は僕らは同等の立場として付き合うようにって…」
 「そうですか…でも僕はこれが普通ですから…」
 「えっ…それって…」
 「では僕はこれで…」
 普賢を振り切って僕は玉虚宮の奥へと向かった…
                    ―つづき―
 ―あとがき―
 久し振りに企画物以外の小説です。リクが溜まっているのであまり書けません…(T_T)
 ようやく普賢が出てきました…でもまだ太公望と友達になってません…早く『望ちゃん』と呼んで欲しいです…