―包帯越しなのに…『こちら』を見た少年に…私は…彼に見られているようなそんな錯覚を起こし…

 …フッと思い出す…『銀』の『瞳』…その眼差しが脳裏に蘇る。

 それに頬が紅潮し…『心臓』が脈打つ…

 …何故…?…私はAKUMAなのに…
 『理由』は解らなかった…けれどなんだかバツが悪くて…無性に気恥ずかしくて…
 「…そうよっ…それより包帯を取っちゃダメっ!治るものも治らなくなるわっ…!…」
 押さえていた少年の手を放し、彼から少し離れようとし時…

 …彼の腕が…まるで見えているかのように私の腕を掴み、そして彼は私を強く抱き締めた。


 
ラーズグリーズの出会い
              ―6―
  


 ―強い力で抱き締められた…けれど…

 「……?…どうしたの…?…」
 すぐに気付いた…彼が震えている事に…
 
 ―微かに…けれど確かに彼は震えていた…

 …それに気付いて…
 「……こわいの…?…」
 もしかして…そう思って問うてみる…

 「…………」
 暫く…その場に沈黙が落ちる…

 「……あの…僕は……」
 そして沈黙の後…彼はポツリと微かな声で呟きかけて…しかし口ごもる…

 ―再び黙ってしまった目の前の少年は…やはり震えていて…けれど不意に私を抱き締めていたその手が放される…
 …あっ…!…
 唐突に離れたその『温もり』に…なんだかまた奇妙な感じになる…
 
 ―『それ』はまるで胸の辺りに穴でも空いたような…変な感じだった…

                                       ―続く―