「…無理ないわよ…目が見えないだけじゃなくて…なにも憶えてないんだもの…」
そう告げて私は彼を優しく抱き締める。
…少しでも…『安心』させてあげたい…
そう思って抱き締めて…そして再び触れた彼の『温もり』に…私は自覚する…
…嗚呼…私は…この『温もり』をもう一度感じたかったんだ…と…
―尤もその『理由』まではまだ解らないのだけれど…
ラーズグリーズの出会い
―8―
記憶を無くしているとはいえ…『敵』の筈の少年を抱き締めて…そして暫し考えて…
「……『アレン』…」
ポツリとそう呟いた。
…それは…『団服(コート)』の釦の裏に刻まれていた『名前』…
…そう…恐らく『彼』の……
…記憶を無くして…目も見えなくて…彼は不安なのだ…だから『名前』が解れば少しは『安心』出来るかもとそう思って呟いた。
「……え?…」
…けれど…彼は不思議そうな表情(かお)で聞き返す。
その彼の様子に…もしかしたら聞こえなかったのかも知れないと思い…
「…『アレン・ウォーカー』…たぶんあなたの名前だと思うの…」
もう一度…今度はフルネームを告げて、そしてそう伝える。確信が無いことも含めて…
…すると彼は私の方を見て…(…と言っても包帯越しだから実際には見てはいないのだけれど…)
「……アレン…ウォー…カー…?…」
そうゆっくりと『その名』を口にし…
「…それが…僕の名前なんですか…?…」
そう問うた。
―続く―