ラプラス―2―
「おぬしが周公旦か!西岐でも最高の政治家と名高い男だな!?」
太公望が周公旦に会っていたその頃―
姫昌は僅かな共を連れて、狩りに出ていた。
この日姫昌は狩りに出るに当たり、慣例にならい占いをおこなった。
―龍にあらず、蛟にあらず、熊にあらず、羆にあらず、虎にあらず、貔にあらず―
この結果に姫昌は占いをよみあぐねた。
「今日の獲物は占えぬほどの大物のようだ」
姫昌の言葉に、散宜生はとんでもない化け物かもしれないと心配した。
しかし姫昌は狩りで獲物を得ることはなかった。
姫昌が城に帰ると、四男の姫旦が先日、過失によって罪を侵し、脱走した武吉が道士と共に戻って来たと報告した。
姫昌は旦が道士に好き放題を言われ、一言も反論できなかった、という話を聞いてその道士に興味を抱いた。
「その道士は賢人だ私は是非ともその方に会い話を聞きたい」
「ではここに呼び寄せましょうか?」
「いや、私から出向くのが礼儀だろう」
姫昌はそういうと斎戒沐浴をして、道士に会うべく城を出た。
「御主人…また釣りっスか…一体何時までこうしてるつもりなんっスか?」
武吉を家に帰した後、そのまま釣りを始めた太公望に四不象は焦れ始めていた…
そんな四不象を適当にあしらいながら、太公望はただ釣りをしていた…
そうして一刻程経った時だった。
それまで、ただ水面を見つめていた、太公望が不意に四不象を見た。
「スープー、済まぬがおぬしちと使いに出てはくれぬか?」
「え…いいっスけど…何処にっスか?」
「うむ、この文を…東海の逢の邑に住む逢尊という人物に届けて貰いたいのだ…」
「東海の逢尊さんっスね、分かったっス…」
四不象は釈然としない様子だった、太公望は何を考えているのか分からない所がある、しかし主に忠実な霊獣は疑問には思っても、こんな時は素直にその命に従う…
東海に向けて飛び立とうとする四不象の背後から、主人の声が追いかけてきた。
「スープー、わしの名は出さず、文を見れば分かると伝えよ…よいな!!」
「…分かったっス…」
そして…見る見る四不象の姿は遠のいて行った…
四不象の姿が見えなくなったのを確認し…太公望はその場を立ち去った。
一方太公望に会うべく城を出た姫昌は、奇妙な噂を耳にする。
―数日程前から渭水のほとりにふらりと現れる釣り人は、ただ直鈎の釣り糸を垂れていると―
―つづく―
―あとがき―
うぅっ…済みません、今回も姫昌様と太公望の出会いのシーン書けませんでした。
東海の逢尊さんに関してはネタバレになるので詳しくは…済みません…まあ知ってる人は知ってるでしょう…参考書籍も…今度、そのうちまとめて発表します…

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