∞螺旋の運命×運命の螺旋∞
             
―第1章―           

 ドンドンと元気良く火影の執務室の扉を叩き、明るすぎる金髪の子供は口を開いた。
 「じいちゃん!!じいちゃん!!オレってば来たってばよ!!」
 「…まったく…相変わらず騒がしいのう…早う入って来いナルト…」
 嘆息を吐き火影は執務室の外で騒ぐその子供に言った。
 「…偶には静かに来れぬか?」
 ナルトが入ってくると、火影は意味ありげな表情(かお)でそう言った。
 「…無理…じいちゃんが『オレ』を呼ぶのが悪いってばよv」
 火影の言葉にナルトもまた意味深な笑みを浮かべる。
 「…まあ確かに…じゃがおぬし知っておったであろう」
 「まあね…でも…じいちゃんが呼んだのは『オレ』だってばよ」
 『何を』とまでは言わない火影に、ナルトは『それ』が解っている様子でニヤリと笑みを浮かべて答えた…
  

 
三度目の卒業試験―1―


 「…まったく!ナルトのやつ…一体どこに行ったんだ!?」
 …そうぼやきながらアカデミー中を駆け回ってイルカはナルトを捜していた。
 理由は…授業が始まっているというのにナルトがいつまで経っても教室に来ないが為である…
 
 …生徒達が言うには…ナルトは前の授業の時にはいたと言う事だった…
 …尤も…授業が終わった時はどうだったか判らないとも皆は言った…
 …ちなみにその授業は演習であり、グラウンドで行われたものだったと言う…

 問題児のナルトのこと、サボりではとの意見もあった…
 …ナルトがいつまでも来ないので、前の授業を担当した教師に、何か気が付いた事は無いかと聞く為に職員室に向かい、聞いてみると…
 …その教師や、その場にいた他の教師から言われた事だった…

 「イルカ先生は真面目ですね。あんなやつは放っておいたらいいじゃないですか」

 悪戯するナルトを叱る度、イルカは他の教師達からそう言われた…

 …イルカ自身内心ではナルトに対し複雑なモノを抱えていた…
 …だが『どうしても』放ってはおけなかった…
…他の教師達が言う様に、他の教師達の様にナルトを放っておけば、或いはこの複雑な思いは消え悩むことも無いかと思った…
 …正直…何度かそうしようかと思った事があった…
 …だが…イルカには『それ』が『どうしても』出来なかった…
 
 …たとえナルトがなんだとしても…

 …イルカにはイルカなりの理由や理想…想いがあってアカデミー教師になった…

 …ここでイルカがナルトを放り出すという事は、その『想い』への裏切りでもあった…

 …イルカはそれだけは嫌だと思っていた…
 『…だからイルカはナルトに対し普通に接しようと決めた』
 …ずっとただ『それだけだ』と思っていた…

                                  ―続く―