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【神田の場合】
俺には今、好きな奴がいる。
こんな殺伐とした生活の中で、恋をするとは夢にも思っていなかった。しかも、顔を合わせる度に喧嘩をしている相手に。
俺だって、喧嘩をしたくてしてるんじゃない。……が、あいつが他の男に無邪気な笑顔を見せる度に、俺の中の独占欲が疼き、あいつに喧嘩を売ってしまう。その度に後悔をするわけだが…。
あいつは教団内でもかなりモテる。あの笑顔を見せられれば誰でもやられてしまうだろう。
中でも要注意なのはあの馬鹿兎………ラビだよな。奴は俺とは正反対の性格をしており、自分の気持ちを素直に伝えることができる。幸いにもあいつはラビの気持ちに気付いてないみたいだが。
それどころか、最近まで俺がラビを、ラビが俺を好きだと思い込んでいたらしい。
リナリーからそのことを聞かされた時はショックで倒れそうになった。
冗談じゃねぇ。何が悲しくてあんな馬鹿兎に惚れなくちゃいけねぇんだ。ああっ、腹が立つ!ラビを二、三発殴りてぇ…!!(←何故?)
……が、そんな誤解も解けたらしく、俺はある決意をした。
それは今日こそあいつに……モヤシに俺の想いを伝えるということ。これ以上、あいつの心が他の男に向かわないように、俺だけに向くように。
「おい、モヤシ!」
廊下を一人で歩いていたモヤシを俺が呼び止めると、モヤシは不思議そうな顔をして振り返った。
無理もねぇか…。俺からモヤシに呼び掛けることなんて滅多に無い。本当は俺だってもっとモヤシと話した(以下略)
「話がある。顔貸せ」
……って、俺は何処かの番長か…!?何で優しい言い方ができねぇんだ!?これじゃあ、モヤシを怖がらせてしまうだけじゃねぇか……!!