―ツゥー…
 …涙が…零れた…
 …でも…以前(まえ)とは違う…今度はちゃんと理由が解ってる…
 …ああ…どうして私は忘れていたのだろう…
 …あの二人の事を…
 …いまでも…あの時の涙の意味は解らない…
 …でも…
 …たぶん二人のどちらかに『何か』があったのだろう…
 
 …でも…でも…
 「…どうして…?…」
 …『転生時』の『記憶』を辿ってみる…生まれ変わってくる為に『腹』を借りた『母親』の『胎内』で…確かに『気配』を感じて…『安心』したのに…(…なんだか嫌な『気配』も一緒に感じたような気もしたけど…)
 「…どうしてあなたがいないの…?…お兄様…」
 …そう言って『少女』は泣いた…
 

 
―聖母の目覚め―
        ―1―
  

 
 …以前見た『夢』…
 …いまなら解る…あれは…前世(むかし)の『夢』…
 …『あのヒト』と『お兄様』と…3人一緒にいた頃の…幸せだった頃の『記憶』…
 …そして…時折見ていた…もう一つの…『不思議な夢』…
 …全然知らない所で…私によく似た顔の『少年』が泣いていた…
 …『あれ』がきっと『お兄様』…
 「…お兄様…腕が無かった…」
 …一体…お兄様に『何が』あったの…?…
 …何故?あんなに苦しそうに泣いていたの…?…
 …いますぐ傍に行きたい…でも…
 「…どこにいるのか解らない…」
 …どうすればいいの…?…
 「…いいえ…そもそも…どうしてお兄様はこの家にいないの…?」
 …一緒に生まれてきた筈の兄がいない…それは…
 
 …『お母さん』に聞いてみるしかないわね…
 そう思い階下へと降りて…『少女』は『母親』に聞くことにした…

                                            ―続く―