青龍の夢―V―
―兄様…兄様大好き…大きくなったら、私は兄様のお嫁さんになるの―
小さな愛らしい声…それは時の彼方から聞こえてくる…懐かしくも愛しい記憶(おもい)
…
不意に遠い何処かからの誰かの呼び声を彼は聞く…
遠い思い出の中の少女の声では無く…
優しい、穏やかな少年の声…
その声に彼は現在(いま)を認識した。
一人の少年が釣り糸を垂れつつ、うたた寝をしていた…
その彼の様子に、嬉しそうに駆け寄るのは、光輪を持つ少年だった…
「…ちゃん…望ちゃん…望ちゃん…」
名前を呼ばれ、少年は目を覚ます。
「おお、普賢…久しぶりじゃのう…」
顔を上げて、彼は嬉しそうに笑い、老人の様な態度で続ける。
「それで…何か用があったんじゃろう…」
「うん、でもよく分かったね…」
少しも不思議そうでも無い様子で普賢は言う。
「用が無ければおぬしはわしを起こしたりはせぬであろう」
そう言って普賢の方を振り向く。
「どうせ原始天尊様が呼んでおるのだろう…一体何の用であろうな…」
「…原始天尊様…お急ぎだったみたいだよ…」
僅かに普賢の様子が変わる…普通には気付けないような微妙な変化…だがそこにいるのは、それを見抜ける者だった…
「…普賢…大丈夫じゃよ…どうせ大した用ではなかろう、原始天尊様は少し大袈裟じゃからのう!」
そう言って、呵々と笑う。
その様子に普賢はにっこりと微笑む…
「…うん…そうだね…」
「うむ…ではわしは行って来る、あまり遅いと後々ジジイが五月蠅いからのう!」
「…ごめん…望ちゃん…そうじゃないんだ…」
…原始天尊の元へと向かう親友の後ろ姿に…普賢は小さく彼に聞こえない様にぽつりと呟きを洩らした…
―崑崙国・玉虚宮・謁見の間―
「原始天尊様が一番弟子・太公望、参りました」
白髪白髭に長く突き出た頭を持つ老人に、太公望は深々と頭を下げた…
―つづく―
―あとがき―
ようやく太公望、出てきました。今回は辛うじて予定通り…かな?
仙道に関する設定はWJ封神と殆ど変わりません(その方がややこしくないし…)ただ人間や人間界との関わり等がもう少し近いものになってます(詳しくはまた今度…)
前回までと話が繋がってないと思われるかも知れませんが、一応それぞれ関連はあります、何の脈絡も無く書いてる訳ではありません…ただ持って回った書き方をしているので、かなり長くなると思いますし、これからも太公望の出ない話は結構あると思います(前回のあとがきで太公望は一応主役と書きましたが、正確には彼は主役の一人に過ぎません…この青龍の夢は某RPG同様複数の主人公がいます…ただその中で彼が特殊な位置に居ることには違いはありませんが…そう言う意味では確かに主役です…)
さて、次回はまた話が少し飛びます…そしてお待ちかねのあの人達が…
太公望と普賢に次ぐ、「何か嬉しい組み合わせ」第2段って所でしょうか?さて一体誰と誰の事でしょう♪
ヒントは超越してる方々です…何かバレバレな気が…
でも太公望も出てきます…多分…(…何かまた怪しい事を…)
次回UPは七月上旬位になると思いますm(_ _)m

