「……ハア…終わった…ようやく全部…」
 ぽつりと…何か…何処か疲れた様な感じでそう呟いたのは…白銀の髪に紅い瞳の魔道士風の一人の少女だった…
 「あらvようやく終わったのねvイシュv」
 不意に背後から掛けられた声に、少女は慌てて振り向くと、そこには目元まで伸ばされた前髪の為にその目は見えないが…黒い髪を肩頃まで伸ばした、ウェイトレス姿の女性がにこやかな笑みを浮かべて立っていた…
 「…テミス姉ちゃん…何で…ここに…」
 微かに震えながら少女は女性に問い掛ける…
 「準備が出来たから迎えに来たのよvバレンも待ってるしね♪」
 女性はにこやかに明るい感じで言う…
 「バレンが?じゃあそっちの方ももう大丈夫なんだ?」
 …機嫌は良さそうだと…内心でホッとしながら少女は確認の為にそう問う…
 「ええvだから早く帰りましょv本番はこれから何だから♪」
 「…姉ちゃん…あのね…」
 …言おうか言うまいかを僅かに迷いながら…少女はそう話し掛ける…
 「なあに?どうしたの?」
 「…あの…姉ちゃん…怒らないで聞いてね!…あたしがバラした訳じゃないから!…『彼女』から伝言…楽しみにしてるからって…それと自分も参加させろって…その…どうもあの計画バレてるみたいよ…」
 …常と異なる少女の態度に…不信に思う女性に対し…少女は一気にそう告げた…
 「……イシュ…貴女『彼女』って?…まさか!?バレてるって!?『あの御方』の事!?どうしてそんなっ!?今回に限ってっ!?」
 少女の言葉に驚愕を露わにし、女性はそう少女に詰め寄った…


 
スレイヤーズのドキドキ!バレンタイン!=その1


 ―テーブルの上のバスケットを見つめつつもそれぞれの心の中には様々な思いが去来していた…
 …ともすれば再び恐怖にのまれそうになっていた一同の重い沈黙を破り、彼等に現状を思い出させたのは…
 ―「…さて…そろそろ本題に入っても宜しいですか?」
 …にこにこと人のよさそうな笑顔を浮かべている…しかし決して油断する事のできる相手では無いと、この場に居る彼等にとっては嫌と言う程解っている相手…
 …しかし唯一この現状打開の鍵を握る存在でもあるもの…
 …魔族の神官…獣神官ゼロスのその言葉だった…

 ゼロスの言葉に皆、微かに固唾を呑む…
 …暫しの沈黙…その後にやがてゼルガディスが口を開いた…
 「……ああ…だがその前に一つだけ確認しておきたい事がある…」
 「…先程も申しましたが、僕は本当に何も企んでいませんよ」
 ゼルガディスがみなまで言う前に、ゼロスはそう言う。
 「…では獣神官よ、腹心はどうなのだ、あまりの事に問い質すのが遅れたが、そもそもお前がここにいると言う事自体が魔族が何かを企んでいるという証明になるのではないか?」
 重々しく、真剣な様子でミルガズィアはそう問い質す。
 「疑り深いですね…でも僕はいま特に獣王様から命令は受けていませんよ…それよりもそろそろ本題に入りませんか?もうあまり時間もありませんし…」
 「…そうか…しかしその時間とはどういう事だ?あの人間の娘も随分と気にしていたが…」
 ゼロスの言葉に釈然としないものを感じながらも一度はそう頷き…そしてふと…何故それほどに時間を気にするのだろうと思い、ミルガズィアはそう問い掛ける。
 「…それはですね…そのチョコレートをあなた方が今日中に食べなかった場合…リナさんが大変な目にあわれるのと…多分確実にその後皆さんも大変な事になるからです…」
 「なに!?それはどういう事だ!?第一それで何故貴様が時間を気にする!!」
 何か複雑そうな様子で説明するゼロスにゼルガディスが食って掛かる。
 「ゼロス本当の事を言って下さい!やっぱり魔族なんて因果な家業だからいけないんです!いますぐ真人間になるためにも!さあ一緒に生の賛歌を歌いましょう!」
 ズイと身を乗り出してゼロスに詰め寄り、凄まじい勢いと迫力でアメリアが一気にそう言う…
 「待って下さい!アメリアさん!無理ですよそんな事したら僕は滅んじゃいます!だっ誰か!ゼルガディスさん!止めて下さい!」
 アメリアの言葉にゼロスは大慌てでそう言う。
 「貴様はそんな程度で滅んだりしないだろう」
 アメリアの暴走を止めて欲しいとゼロスに言われたゼルガディスは、しかしあっさりとゼロスを見捨てる…
 …いやむしろいっそ滅んでしまえと、ゼロスを睨み付けるその視線は言っている…
 「確かにアメリアさんの攻撃では滅びません…でもリナさんがっ!」
 「どういう事だ?何でリナが出てくるんだ?」
 慌てて言ったゼロスの言葉に、ガウリイが口を挟む…
 「…ガウリイ様…さっきまで眠ってらしたんじゃ…」
 シルフィールがそう問い掛ける…確かにさっきまで眠ってたのにと…
 「…ああ…そうなんだけど…なんかリナの事話してたみたいだから一応起きといた方がいいかなと思ったんだ!」
 眠そうに目をこすりながら、ガウリイは…俺保護者だし、自称だけどな…とぽつりと言った…
 「…そうですか…」
 ガウリイの言葉に複雑そうな表情をして、シルフィールは小さくそう呟いた…
 「それで何なんだ?ゼロス?」
 ガウリイがゼロスの方に向き直り、再びそう問い掛ける。
 「…解りました…言います…僕もリナさんから直接聞いたわけではありませんから、はっきりした事は言えませんが…実はリナさんは今年ある人の命令で、そのチョコレートを今日中に皆さん…あのご様子ではまだ他にもいるんでしょうけど…とにかく皆さんに渡し食べて貰う必要があるようで…それで…もしそれに失敗した場合は…リナさんは大変な目に遭われ…そしてそうなれば当然あのリナさんの事…この場にいる僕ら全員、連帯責任でそれ相応の報復をされるだろうと言う事です…」
 「なっ!ちょっと待て!リナが命令だと!?それにリナをそんな目に遭わせる事が出来る奴がいると言うのか!?それにそれのどこが貴様が時間を気にする理由だと言うんだ!」
 複雑そうに言うゼロスをゼルガディスは問い詰める。
 「落ち着いて下さい、ゼルガディスさん、先程も言いましたが、そのあたりの事は僕の推測です…ただ…リナさんは先刻ここを出て行かれる時に何かかなり必死のご様子でした…それであのご様子なら…リナさんはそれぐらいされるんじゃないかなと思ったんです…」
 「リナが必死だっただと!?どういう事だ…」
 ゼロスの説明に、ゼルガディスは困惑してそう言った…

                                  ―続く―




 ―あとがき―
 RIN:皆様、こんばんは!RINです、お久し振りですv
     ようやくゼロスの説明が始まりました。
  L様:でも説明って言ってもまだ本題(バレヌゥスの奇蹟記念日=バレンタイン)
     の説明には入ってないじゃない。
 RIN:ヴッ!L様…まあ…確かにそうなんですけど…うう…
     …でも次回には…多分…
  L様:…ふぅん…でも確か予定ではこの話もっと短い筈だったわよねぇ?
     …一体どうしてこんなに長くなったのかしら?
 RIN:…アウ…それは…所でL様…その巨大な氷の塊は一体…
  L様:ああこれ?これはこの前Sの奴のとこに行って来た時にとってきたのよ♪
 RIN:…あのL様…私目が悪いんで…気のせいかもしれないんですけど…
     …あの…その氷の中で…魔王が泣いてる様な…
  L様:気の所為よ!(きっぱり!)
 RIN:そ…ですか……それでなんでその氷私の頭上近くに浮いてるんでしょうか…
  L様:あらvそんなの決まってるでしょv
     分かり切った事を聞くの、あんたの悪い癖よv
 RIN:アウアウ…
  L様:それじゃあ覚悟は良いわね♪
 RIN:よっ!良くありませっ…ドゴガシャン!!!
 ―そしてRINは沈黙した…
 ―部下Sは目を回している…
  L様:あらあらv二人とも読者様を放ってあの程度で気絶なんかして…
     仕方ないわね…
     …では皆さん何故か気絶したRINに代わって、
     ここまでお読み下さり有り難うございますvそれではまた次回v

 ―一礼するL様…ゆっくりと下りてくる幕…

                                  ―幕―
 
 ―それではまたの機会に―RIN―