「その時…ブックマンにアレンくんの事を話したらとても驚いていたよ。『有り得ない』って…」
 アレンを真っ直ぐに見据え真剣な眼差しでコムイは告げて…そしてにっこりと笑いかける。
 そのコムイの笑顔にアレンは目を見開き…
 「…?…有り得ないってどう言うことですか…?…」
 『意外な言葉』を聞いたと言わんばかりの表情(かお)で…唖然とした様子でそう問うた…


 
―『種』と『ノア』―
              ―11―
  


 「…?…有り得ないってどう言うことですか…?…」
 …どうしてそんな…
 その『言葉』の『意味』と…そして…さっきのコムイさんの笑顔の理由が良く解らなくて…僕は目を見開く…
 そんな僕の内心を知ってか知らずか…コムイさんが僕をジッと見据え…
 「…普通なら…とっくの昔に心も体も壊れて…死んでしまっている筈だそうだよ…」
 そう少し固い口調で…さっきの真剣な表情に戻ってそう言う。
 「…えっ…?…」
 コムイさんの『言葉』に僕は目を見開く。

 …だって…僕が師匠に聞いたのは…聞いてたのは……

 …「…アレン…『種』は『伯爵』との『契約』の『証』だ。『それ』が『お前』の内(なか)にある限り『お前』と『伯爵』の間には『主』と『従』の『関係』が成り立っている。決して『ヤツら』に気付かれるな『種』の『存在』を…決して『闇』に…『種』に囚われるな。…いまは俺の『術』で抑えちゃいるが、もし『種』がその『魔力』を完全に発揮し『お前』が『種』の『魔力』に囚われた『時』…『お前』の『生死』に関わらず『お前』はアクマ同様『伯爵』の思惑通りに動く『玩具』に…『下僕同然』の存在に成り果てる。『お前』が『お前』の『意志』で動いてるつもりでも全てヤツの意のまま…それが…『種』を植え付けられた『人間』の…植え付けられている『人間』の…末路だ」…

 ―脳裏に過ぎる…あの日の師匠の『言葉』…

 ……師匠が…嘘を吐いた…?…

 「…師匠は…僕が…伯爵の玩具になるって…」
 …どうして…?…
 …師匠…あなたが嘘を吐いたんなら…僕は誰を…何を信じればいいんですか…?…

 …僕は…誰に助けを求めればいいんですか…?…

 ―ツーと涙が頬を伝った…

                                       ―続く―