「…師匠は…僕が…伯爵の玩具になるって…」
目を見開いてアレンくんが涙を流す…
…随分ショックを受けているな…
……アレンくん…キミにとってクロスは特別なんだね…
…けれど…だからアレンくんはショックを受けている…
…クロスは恐らく総てを話してはいなかったんだろう…そしてその『事実』が不安定になっているアレンくんにはショックだったんだろう…
そう思って小さく息を吐く…
…無理もない…アレンくんは…しっかりしてるように見えるけど…実際はまだ子供だ…しかも伯爵に『種』を植え付けられている所為か…ちょっとした事で不安定になる。…多分クロスは…余計な事まで言ってアレンくんの精神に要らない負担を掛けないようにと思ったんだろう…
…たぶん…(…まさかと思うけど単にめんどくさかっただけなんて…そんなアレンくんに不憫な理由じゃないよ…ね…?…)
そう考えて、胸中で「ハハッ」と乾いた笑いを漏らし…(…但しあくまで表面上は真面目な顔で…)
「…アレンくん…多分クロスの話自体に『嘘』は無いと思うよ…」
蒼白になり涙を流すアレンくんを真っ直ぐに見遣り僕はそう言った。
―『種』と『ノア』―
―12―
―……ずっと『僕』を守ってくれてると…そう思っていた人が『嘘』を吐いていた……―
―……厳しいけど…『僕』のこと…いつも守ってくれてるって…信じて良いって…そう思ってたのに……―
―……思ってたのに……―
ツゥーと僕の頬を涙が伝う…視界が霞む…『意識』が茫洋とし…僕は『自分』がいま何を考えているのかも判らなくなり掛けていた時…
「…アレンくん…多分クロスの話自体に『嘘』は無いと思うよ…」
不意に耳に飛び込んできたその『言葉』に僕はハッとする。
「……え…?…」
…あれ…?…僕…いま…?…一瞬…意識が……
…!…いや…それより…いまの…!…
「…コムイさん…それ…どういう…」
僕はさっきの『言葉』を『認識』し、それがコムイさんの『言葉』だと気が付くと、瞠目しそう問う…
「…アレンくん…キミも知ってると思うけど…クロスは凄い自信家なんだ」
僕の問い掛けに対しコムイさんが人差し指を立ててそう言う。
「……はあ…知ってますが…」
…勿論知ってる…でもなんで今更…
そう思いつつも僕はなんとなく呆気に取られてそう頷く。
「うん。そして同時に合理主義者でもある」
頷いた僕に、コムイさんも頷きそう続ける。
…本当に今更だ…
そう思いつつも僕は更に思う。
…でも…
…『あれ』って…合理主義って言っていいんだろうか…?…
そう思い…僕は内心『あれ?』と疑問に感じ首を傾げた。
―続く―