「…まあけれど…だからってこんなキミの精神状態の悪い時に聞くべきじゃなかったね。……ごめん…悪かった反省してる…」
 そう言ってコムイさんは頭を下げる。
 そんなコムイさんに僕は慌てて…
 「…そっ…そんなっ…コムイさんっ…」
 『頭を上げて下さい!』そう言おうとした時…
 「…でもねアレンくん…僕は確かめたいって『気持ち』以上に…どうしてもキミに云いたい…『伝えておきたい』事があったんだ…」
 そう言ってコムイさんがにっこりと微笑った。


 
―『種』と『ノア』―
              ―15―
  


 
 「……コムイ…さ…ん…」
 コムイさんのその言葉とその表情に僕は目を見開く…
 「…さっきのことはね…全部ブックマンから聞いたことなんだけど、ブックマンが言うには…『キミが『種』を抑える事が出来てること』事態がもう普通なら有り得ないそうなんだ」
 「…え…?…」
 コムイさんの言葉に僕は目を瞠る。
 …けれどそう言えばさっきも…『有り得ない』ってブックマンが驚いたって…
 「…でも…僕は実際…あっ!そうか僕には師匠がいたし…それにイノセンスだって…」
 コムイさんの言葉に最初は戸惑ったが…けれど『僕の場合』は『普通』とは言えないんだったと言うことに気付き…『だから』じゃないかと言おうとして…
 「…アレンくん…ブックマンはね…全部話しを聞いた上で『有り得ない』って言ったんだ…」
 コムイさんにそう遮られる。
 ……え…?…
 「…でも…僕は…」
 コムイさんの言葉に僕は言い募ろうとし…
 「…落ち着いてアレンくん…」
 コムイさんに…そう片手で制される。
 「……ブックマンはね…『普通』…伯爵が『アクマにする為』に『種』を植え付ける人間は、その時点で心が『闇』に包まれているから…仮にアレンくんのようにギリギリで助かったとしても…その場にクロスが…『術師』がいたとしても…『闇』に堕ちようとしてる『心』を掬い上げる事自体が不可能なんだそうだ」
 …それは…どういう意味ですか…?…コムイさん…
 言われた言葉に…愕然とする…
 「…仮にそれが可能だとして…もうその時点で…『身体』は『種』の『魔力』でボロボロの状態になってしまうものらしい…どんなに即座に『対処』しても『身体』が保たないか…『心』が保たないか…キミはそういう状態だった。4年前に…死んでいてもおかしくない…否…この4年間まったく健康に過ごす事ができたことが『有り得ない』とブックマンは言ったんだ。…『クロスと言う存在』やキミが『寄生型イノセンスの適合者』だと言う『事実』を加味した上で…だから…これは完全に僕の『推測』なんだけど…でも…僕はまず間違ってないと思ってる」
 愕然とする僕をコムイさんが真っ直ぐに見つめ真剣な表情でそう言った。
                                       ―続く―