僕の言った『言葉』にアレンくんは目を見開く…恐らく思い当たる事があったのだろう…
 …まあ実際…(恐らくも何も…)僕はティムの『記録(メモリー)』の中で何度もアレンくんに同様の事を言うクロスの映像を見ているんだけど…
 そう思いつつ…俯いて…何事かを深刻そうな表情(かお)で考えるアレンくんのその様子を、暫し黙って見守ることにする…

 …彼が自身の『悪癖』と…そして度々クロスに指摘され、言われ続けた『言葉』の『本当』の『意味』に気付く為にも…彼には考える時間が必要だろう…
 そう思って…

 ―そうして暫しの沈黙の後に…
 
 「……ノアの一族…」
 ポツリとアレンくんは呟く……

 ―…呟いたその表情(かお)は酷く深刻そうで…

 僕は…アレンくんが…彼が…不安定になっていることや…そう言えば最初から彼はノアについて気にしていたと言うことを思い出し…
  
 「…アレンくん…キミは今…ノアに出会ったり…他にも色々あって…それが切っ掛けでちょっと不安定になってるだけだよ…」
 そうアレンくんに告げる…
 出来るだけ…彼の心を落ち着けるべく穏やかに微笑い掛けて…

 そうして…
 「…ティムの『記録(メモリー)』を見たよ…辛かったね…」
 そう続けた… 
 

 
―『種』と『ノア』―
              ―20―
  


 「…『全部』知ってるから…大丈夫だよ」
 そう言ってコムイさんは穏やかに微笑い…
 「…フォローするって『約束』したよね」
 そしてにっこり笑って…
 「そんな簡単に放り出すくらいなら最初っから『約束』なんてしないよ」
 コムイさんは続ける…
 「僕らは『仲間』だ。それとも信じられないかい?」
 キッパリと言われた『言葉』が嬉しくて頬を涙が伝う…
 「……いいえ…」
 そして僕は首を振り…
 「…いいえ…信じて…信じ…ます…」
 …『信じてます』そう言おうとして…僕は一瞬惑う…その『言葉』を言う『資格』が『本当』に僕にあるのかと…
 …こんなに揺らいだ僕が…
 『種』のことを知られたら『仲間(みんな)』になんて思われるか…その『不安』に揺れた僕が…その『言葉』を言う『資格』が『本当』にあるのかと…

 ………でも…それでも…僕は……

 …コムイさんの『言葉』を『信じたい』…
 そう思ったから…
 そしてとても嬉しかったから…

 …だから…
 …僕の願望が混じっていますが…勝手だと解っていますが…それでも……

 「…信じます」
 そう言わせて下さい。

                                       ―続く―