「…僕の『判断』も…クロスの『判断』も…キミはやっぱり信じられないのかい?」
 そう言った僕に…
 「そんなことっ…!…」
 アレンくんは弾かれた様に顔を上げ…けれどすぐにその表情(かお)をくしゃりと歪ませて口ごもる。
 
 …信じては…いてはくれているのだろう。だけど彼は『自信』がないのだろう。

 …仕方ないのかも知れない…それ程に彼の『闇』は深いんだから…

 …でも…
 そこまで思って僕は口を開くと…
 「…アレンくん…クロスの『言葉』をちゃんと思いだすんだ。キミの『闇』は確かに強く深い。でもそれはキミの『光』が強いから…その裏返しなんだ。そしてそれは同時に『心』が強いと言う事でもあるんだ」
 アレンくんの目を真っ直ぐに見つめてそう言った。


 
―『種』と『ノア』―
              ―22―
  


 「…コムイ…さん…」
 コムイさんの『言葉』に…僕は目を見開いてポツリと呟く…
 「…アレンくん…クロスはキミに『光』と『闇』を『意識』して『制御』しろって教えた筈だよ。そうすることで『種』を抑える事が出来るって…でもいまキミは『闇』ばかりを見て『光』を忘れてる。『闇』を恐れて…そして『闇』からも『本当』の『意味』では目を逸らしてる。だからキミは忘れてしまったんだキミの『闇』は元々は『光』の裏返しだと言うことを…そしてだから今キミはそんなに『自信』が無くて。そして恐れているんだ」
 コムイさんのその『言葉』に僕は思い出す。確かに『それ』はかって何度となく師匠に言われ続けたことで…決して忘れるなと告げられていた事を…

 ―『それさえ忘れなければ決して『闇』に堕ちたりしない』と…そう師匠に告げられていたことと…

 ―そして…
 かって師匠には『同じこと』を言われたことがあったのだとそう思い出した… 

 「『自分(テメェ)』が信じられないのならオレを信じろ!それが無理なら『お前』が愛した『養父(マナ)』を、その『言葉』を信じろっ!」

 …もうすっかり忘れかけていたけれど…

 ―「アレンは強くて優しい子ですね。…でもキミは素直すぎる所があるからちょっと心配です」
 そう言ってマナは笑った…
 「知らない人について行っちゃダメですよ」と…
 そんなマナに僕は…
 「…でもマナも知らない人だったよ?」
 と言って…だけどと付け足して…
 「…でも僕はマナが悪い人じゃないって!イイ人だって知ってたよ!」
 そう言うとマナが…
 「僕は良いけど他の人はダメです!」と…なんだか良く解らない事を堂々と胸を張って言って…僕も「そうだね」と言って二人で声を上げて思いっ切り笑った。

 …そして『その時』の事を思い出して僕は涙を流した。

                                       ―続く―