…ヒナタの母親が十数年前いつきの当主候補の一人だった…
 …そううずまきは言った…
 …でも…うずまき…『それ』には矛盾がある…

 「…でも…確か…ヒナタの母親は…」

 …大きな矛盾が…


 
虎の穴―18―


 「…ヒナタの母親は先代日向当主の姪・つまりヒアシ殿とはいとこ同士で日向分家の出身の筈…そう言いたいんだろ?紅先生…」
 紅先生が何を言いたいのかは解ってる…確かにこれは大きな矛盾だ…
 …でも事実だけがすべてじゃない…
 「…ああそうだ…」
 「…確かにヒナタの母親は日向の分家出身…でも…その母親は『いつき』の本家の出身で、俺の母様の母親、つまり俺の婆様とは姉妹だったらしくてね…十数年前…先代の当主が代替わりする時に、当主候補の一人に名前が挙がったんだ…」
 頷いた紅先生に俺はそう説明する…
 …目の端ではアスマや綱手の婆ちゃんが、唖然とした様子でこちらを見ているが、無視する…
 …どうせ『日向』に関しては、この前ヒアシのおっちゃんと『渦巻』と『斉樹』のジジイ連中に嵌められて、ヒナタにはバラしたとこなんだ…
 …まったく決定権は俺にあるってのに…あいつら…
 …だから紅先生に俺の本性バラす時がきたら、ついでに『日向』のことも、言ってやるって決めてたんだ!

 …その方が後々『絶対』良くなるからな…
 …そう…ヒナタの為にも…

 …まったく…あいつらは…

 「…ヒナタの母方の祖母が…でもそれでどうして…と…ち…ちょっとまて…うずまき!それじゃあさっき一番近いって言ったのは…」
 …俺の話に紅先生はなるほどと頷きながらも釈然としないのか何かを言いかけて…不意に気付いたように顔を上げる…
 「…ああ…ヒナタと俺ははとこになる…それと紅先生が疑問に思っていることだけど、『いつき』は『いつき』から他家へ嫁いだ者には、当主候補の資格はなくなる、でも例えば他家へ嫁いだ『いつき』の当主候補に『娘』が生まれた場合は、その『娘』には将来『いつき』に嫁ぐ、或いは養子縁組をするという前提で、当主候補としての資格と色々な特権が認められるんだ。だからヒナタの母親は本来『いつき』の分家との縁組みが生まれた時には約束されてて、確か許嫁もいたんだけど…先代の『いつき』の当主が、自分が次ぐから、養子縁組の約束も婚約も解消しても大丈夫だって言ったんだ…それでもかなり迷ってたらしいんだけど…許嫁からもヒアシ殿と二人揃って、色々言われて…それで結婚決めたらしい…まあ…それもあってヒアシ殿はその相手に色々負い目があったらしいんだけど…でもこれだけならまだ『いつき』に負い目を感じる必要はなかったんだけど…」
 「どういうこと?それにさっきから聞いてると、『嫁ぐ』とか『娘』とかって言ってるけど…うずまきの母親にも同じ資格があったのなら…」
 …紅先生…気付いたみたいだな…
 …そう…当主候補の資格…『子供』にはあるのなら…『日向』がそれほど気にすることじゃない…
 …まあ…もっとも…ヒアシのおっちゃんが気にしているのは『いつき』だけじゃないんだけどね…本当は…
 「…そう…だから13年前…九尾の事件がもとで、当時の『いつき』の当主が亡くなった時は、…俺の母様が候補に挙がったんだ、俺の母様は正確には他家に嫁いだ訳じゃなくて、孤児院生まれだった親父が『いつき』に婿養子に入っていたから、まだ母様は一応当主候補の資格を無くしていなかったんだ…」
 「…ち…ちょっと待って…ナルト…」
 カカシのヤロウがマヌケな声を出す…
 …どうやら知らなかったらしい…
 「…それで実際1年程は、母様が当主代理を務めていたんだけど…その後ちょっとわけがあって母様は代理を務められなくなったんだ…」
 …俺はカカシのヤロウを無視して言う。
 「ナ…ナルト〜……!はっ!そうだ!ナルト!ナルトは?ナルトは継がないの?」
 …カカシ…おまえ…上忍のくせに…
 「…はあ…俺にはその権利は無い…『いつき』は女系なんだよ!当主は『女』だけ…男がなれるのは精々が代理か後見人まで…それだって成人するか、せめて上忍にならないと認められないんだよ…いままでの話で『いつき』が女系だって気付かなかったのかよ!…まったく…おまえホントに上忍か?」
 「うん♪」
 …俺が嘆息を吐き…呆れ気味にそう言うと…カカシのバカは、なにを考えてるのか、凄く嬉しそうに頷いた…
 「…なんでそんな嬉しそうなんだよ…紅先生は気付いてたぞ…」
 「…へ?…そうなの紅?」
 …俺の言葉に…カカシはキョトンとした様子で、紅先生の方を向き、問い掛ける…
 「…ええ…大体予想はついてたわよ…」
 「…そうなの?…」
 頷く紅先生にカカシはそう問う…
 「…まったく…気付かないのはオマエぐらいだ…」
 アスマが溜め息混じりに言う…
 「…まあいい…話し戻すぞ…それでいまのところ当主候補の資格を持ってるヤツが一人もいないんだ…養子縁組や縁談で当主候補の資格を得られる『娘』は何人かいるけど…現在その条件が該当する当人達は『いつき』のことも何も知らないし…こればかりは本人の気持ちも関わってくるし…そういうわけでヒアシ殿が気にしてるわけだ…なにせ『あの時』ヒアシ殿は選べたわけだから『日向当主』か『いつき』に婿養子に入るか…」
 「…ひゅ…日向当主が婿養子?」
 …紅先生さすがに驚いた様だ…まあ解るけど…でも…
 「…まあ…本来は『いつき』家への婿養子の話は、ヒアシ殿じゃなくて、弟のヒザシさんの方にあったんだ…さっき当主候補には特権があるって言ったけど、実はその特権はその配偶者候補…つまり許嫁にも使えるんだ…それでヒザシさんはその一人だった…結局ヒザシさんは日向の分家の女性が好きだったらしくて、その人と結婚したけど…その特権って言うのは…『日向』の呪印を免除されるというものなんだ…」
 …ホントは少し違うけどな…
 『…じゅ…呪印を?』
 …イルカ先生…紅先生…カカシの三人が驚く…
 …まあ…これは当然か…
 「…かわりに『いつき』の籍に入ったら『白眼』と『日向』の『遺伝子』に『封印』が掛けられ、『いつき』の『血』の顕在化を試される…まあこれは…当主候補とか『日向』だけに限った話じゃないんだけど…」
 …だから…当主候補にって言うよりも…正確にはこれは『斉樹』が持ってる『特権』なんだけど…
 …本当の…細かいトコまで言うと…流石にマズイしな…
 「…ちょっ…ナルト…いま凄いこと言わなかった?」
 …いい加減カカシの相手するのも面倒だ…無視してやる…
 「…『封印』なんてことができるのは…『いつき』のある『特性』が原因で、まあこの『特性』までは話さないけど…『いつき』の縁戚関係が凄いのは、この事とも関係してる…」
 …でも…ここまで言ったんだし…これくらいはいいか…
 …これに関してはある程度のヤツなら知ってることだしな…
 「…ナ…ナルト〜…無視しないでよ〜…」
 …うるさい…でも無視…
 …だいたいこのバカの相手してた所為で、余計話が長くなったんだし…
 「…まあ…そう言うわけで…ヒアシ殿がヒナタを当主にしないって言っているのも…実は『いつき』の家を気にしてって言うのもあるんだ…ヒナタが『いつき』に入ることになるのかどうかはまだ決まってないし…『いつき』側としては単なる養子縁組ならハナビでもいいわけだから…ただ…ヒナタの方が年上だし…『いつき』の『家』も結構色々あって精神的にタフでないと駄目な『家』ではあるから…たぶん本人ヒナタを鍛えてるつもりなんだと思う…」
 「………………」
 …おっ?カカシのヤツ隅っこの方で座り込んでる…
 …ちょっと不気味だけど…まあ…静かになったからヨシとしよう…うん…
 「…まあ…とにかくそういう『特殊』な『家』だから…上層部とか名家の宗家なんかは『いつき』のことを気にして…それで『俺』のことも知ってるヤツラが、色々気にしてるんだよ…」
 …あの混乱状態で…『うずまきナルト』の素性が知られれば…『いつき』の事は知ってても…『斉樹』や『渦巻』を知らないヤツラが…知っていても、その『役割』までは知らないヤツラが…パニックおこしそうだったし…実際『何』があるかわからなかった…
 …火種は山ほど転がっていたから…
 「…じゃ…じゃあ日向当主は…」
 …紅先生の表情が心なしか明るくなる…ヒナタは良い先生に恵まれたよな…ホント…
 「…少なくともヒナタが嫌いでやってるわけじゃないらしいよ…」
 …それどころか…ホントは……でも…あの人不器用だからな〜…
 「…そうだったのか…有り難う…うずまき…」
 「…ユイって呼んでいいよ…紅先生とイルカ先生は…じいちゃんが付けてくれた『特別』な『名前』だけど…俺先生達好きだから…」
 …にっこり笑って俺はそう言った…

                                  ―続く―
 ―あとがき― 
 どうもこんにちはRINです。

 浜口篤子様、取り敢えず第18話書き上がりました。
 そして今回ようやく『紅の疑問解決編』が終わりました。
 予想以上に『上忍編』が延びてしまいましたが…
 …長かったこの『上忍編』も、今度こそ次回で終わります。
 …そしてこの『上忍編』が終わったら、以前から話のあった、おまけエピソードの制作に着手しようと思います。

 …それで次回ですが…次回19話は3月下旬にはUPできると思います…
 …プロットは出来上がっているので…あとは書くだけですので… 
 …そして既に恒例化している次回予告ですが…
 …今回はちょっと手法を変えて…予告を織り交ぜた…『おまけ』を書かせて頂きました。
 …多少ネタバレを含みます…
 …読みたくない方は…ブラウザで『戻る』をクリックして下さい…
 …読まれる方だけ…下へスクロールして下さい。

                                  ―RIN―

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 …本当に読みますか?

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  …では…どうぞ…

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  …カカシは…強い衝撃を受けた…
  …ナルトの言葉に…そして…その表情(カオ)に…

  …ナルト…どうしてオレはダメなの?…
  …どうしてオレだけ…オマエの『特別』になれないの?…
  …カカシは知らない…
  …ナルトが…
  …『ナニ』を『オモイ』…『ナニ』に『苦しみ』…
  …『ナニ』を『厭い』…『ナニ』に『憂い』…
  …そして…『ナニ』を…
  ……『赦し』…『憎み』…『嫌い』……
  ……『慕い』…『求め』…『愛したか』を……
  ……『ナニ』を『哀しみ』・『悲しんだ』かを…

  …カカシは識らない…
  …ナルトが…カカシの…
  …『ナニ』を『赦し』…
  …そして…『何故』…『許さない』のかを…

  …『それ』はナルトの…『優しさ』…

  …『それでも』…『時』はやってくる… 
  …『決断』の『時』は…

  …いつまでも先延ばしにはできないから…
  …『秘密』はいつか明かされるモノだから… 

  …そうして…『秘密』は明かされる…
 
  …マイゴになったコドモのコエ…
  …途方に暮れたそのコエに…
  …空を泳ぐ…その手に…

  …気付く為に与えられる…
  …ソレハ…
  …最後のチャンス…  

  …その『時』は近い… 
  
 …………………………………………………………………………………………………… 


 …ここまでお読み下さりどうも有り難うございます…

                                  ―それではまたの機会に―RIN―