…サクラを呼ぶべく、その部屋の前に来た時には、扉を開けるまでもなく、ナルトには判っていた…サクラが凄まじいまでに集中していることが…

 …どんなにサクラが頑張っているのか知っていたから…『ドベのナルト』で入室してサクラの邪魔をするのは少しだけ躊躇われて…
 …でもサクラを連れて行かないわけにもいかないから…迷いながらも…控えめにノックをした…
 …『ドベのナルト』らしくはないと…もしかしたら…疑われるかも知れないと…解っていたけれど…
 …疑われたら…その時は…『ドベのナルト』の勢いで…煙に巻いてしまおうと…そう考えて…
 …でも…サクラは…もしかしたらと…思ってはいたのだが…ノックの音にも気付かない程集中していて…すると尚更邪魔をするのが躊躇われて…
 …まあ…もういいやと…
 …誰も見ていないしと考え…
 …気配を消して静かに…音も無く扉を開けて…素早く部屋へと身を滑り込ませ…また…音も無く扉を閉めた…

 …そうして…気配を消したまま…サクラが一段落付くまで待とうと決めた…


 
虎の穴―24― 


 …ブツブツ…
 「……えっと……確か……」
 …ブツブツ…
 「……これはー……」
 …ブツブツ…
 「……それで……」
 …ブツブツ…
 「……これは…どっかで見たわよねー……」
 …ブツブツ…
 「……えっと…どこ…だったけ……」
 …ウーン…
 「…あっ!そうよっ!『禁医術全書』壱之巻第三章第六項だわっ!早速借りにっ!…」
 …そう言ってサクラは立ち上がり、目的の本を借りに行こうと、振り向いて…驚き…暫し…口をパクパクと開閉させて…
 …そして…
 「…ぁ…あ…あんたなんでこんなところにいるのよー!!」
 …(…振り向いたら…)…目の前に突然現れた(入院している筈の)同期の姿にサクラは本気で驚き…
 「やっほー!サックラちゃーん!!よっくぞっ!!聞いてくれましたー!!サクラちゃん!!オレ達にひさびさに任務だってばよ!!」
 …いつもと変わらぬ…騒々しいナルトの…その言動に…
 (…なんで…あたし…こいつが入って来たのに気付かなかったの…)
 ナルトに気付けなかったことに落ち込みつつも…
 (…でも…変ね…確かに…集中してたけど…ドアを開けて入って来たら判るのに…相手が師匠やシズネさんなら別だけど…)
 …その事に疑問を感じ掛けた時…
 「サクラちゃん!!早く!!任務だってばよ!!綱手のばあちゃんが呼んでるってばよ!!」
 早く!早く!と今にも一人で駆けて行きそうな、ナルトのその言葉から…
 …『遅いっ!!』と怒りながら待っている、綱手の姿が…瞬時にサクラの脳裏に過ぎり…
 …瞬間サクラは蒼白になり…
 …直前まで考えていた疑問はどこか彼方へ吹っ飛び…
 「!あんたっ!それ早く言いなさいよっ!!急ぐわよっ!!」
 ナルトの襟首引っ掴み!凄まじい勢いで駆けだして…
 …数メートルは行った時…
 「!ッサッ!サクラちゃんっ!まっ!待って…」
 ナルトの慌てた様な声…
 「!もう!何よっ!あんたっ!!綱手師匠すっごい恐いのよっ!!きっと今頃怒ってるわっ!!」
 立ち止まって振り返りそう怒鳴りつけるっ!
 「…で…でもサクラちゃん…何処に行くのか知ってるってば?執務室じゃないってばよ?」
 僅かに及び腰にそう言うナルトの言葉に、てっきり綱手は執務室にいるのだと思い、執務室へと怒濤の勢いで向かっていたサクラは暫し呆気に取られ…
 …次いで…
 「えええー!!!」
 …建物全体を揺るがさんばかりの大絶叫の後…
 「ナ・ル・トー!あんたねー!なんで『それ』をもっと早く言わないのー!!!」
 ナルトの襟首を再度引っ掴み、声を限りにそう叫んだ。
 「…そ…そんな事言っても…サクラちゃん全然聞いてくれなかったってばよ…」
 …微かにそう言うナルトに… 
 「なんですってー!!なんか言ったかしらぁ?ナ・ル・ト?…あんたねー!言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよー!!」
 「…な…なんでもないです…てばよ…」
 サクラの凄まじいまでの剣幕にナルトは思わずと言った様子で居住まいを正してそう言う…
 …そのナルトの様子に僅かに溜飲を下げて…
 「じゃあナルト?綱手師匠は何処にいるの?何処に行けばいいの?」
 『さっさと答えなさい!』とばかりに睨み付けて言えば…
 ナルトはびくびくしながら口を開いた…
 …そうして…次いで出てきた、ナルトの言葉に…
 …どうしてもっと早く言わないのかと再度ナルトを締め上げて…
 「急ぐわよっ!!」
 そう叫んで…もと来た道を駆け戻った…振り返らずに…
 …木の葉病院・特別病棟を目指して…
 
 …振り返らなかったから…サクラは気付かなかった…
 …駆けだしたサクラを…ナルトがなんとも意味有り気な笑みを浮かべて見つめていたことを…

                                       ―続く―
 ―あとがき―
 申し訳ありません。
 皆様には謝る以外にないRINです。

 浜口篤子様…予定を大幅に遅れてしまいましたが、ようやく『虎の穴』第24話が書き上がりました。
 …八月末から色々あって…一時書けなくなっておりましたが…なんとか頑張って書き上げました。
 …25話はなんとか11月中に書き上げようと思っております…(…そう言ってまた遅れたら済みません…)
 
 …次回は…リーとネジが登場!…と言うことに相成ると思います…

 ※…ちなみに今回サクラがいたのは木の葉病院の研究棟というところです…(…こんなことは作中で書けと言われそうですね…力量不足で済みません…) 

                                  ―それではまたの機会に―RIN―